3日目 バ ン パ イ ン ・ ロ ッ ブ リ ー
スリランカからの帰途、バンコクに着いたのは6時15分。入国すると6時45分だった。バゲージは、スリランカから日本までスルーなので、必要最小限のものだけを持っている。帰国便は23時59分発だが、ドンムアン空港でシャワー、夕食、ネットの予定があり19時ごろに戻ってきたい。この間、約12時間で、バンパイン離宮とロッブリー遺跡を訪問しようというのが本日の計画だ。 ドンムアン空港からドンムアン駅への連絡橋を渡る。駅のホームへはスロープで降りるようになっている。この駅からバンコク方面に向かったことはあるが、アユタヤ方面へ乗車するのは初めてだ。アユタヤに列車で行ったことはあるが、そのときはホアランポン駅から乗車している。
バンパインには止まらない列車も多く、次に止まる列車は7時52分発。しばらくホームで待った。ホーム上は、売店が並び、市場のようになっている。 バンパインまでは20バーツ(約67円)。これでも、座席指定になっている。とはいえ、やってきた列車ではすでに客が座っていたので、代わってもらって窮屈な思いをするより、空いた席でのびのびするほうを選んだ。
車内は物売りが行ったり来たりでとても賑やかだ。バンパインには8時22分着。あっという間に30分が過ぎた。 バンパインの駅は小駅。ロッブリー行きの時刻を確かめようとするが、時刻表が数字をのぞいてタイ文字だけで書かれているので、行き先などが読めない。それで、窓口で尋ねて11時7分の列車に乗ることを決定。
列車を降りた客は数えるほど。うちバンパイン離宮に向かう客は自分だけのようだ。トゥクトゥクが10kmあるなんて嘘をついてくる。 列車の中から、右の塔が見えていたので大体の位置はわかっている。ガイドブックでは駅から12,3分とあるが、これは少し問題だ。12,3分で確かに離宮を囲む壁にたどり着く。しかし、壁に沿ってさらに12,3分歩く必要があるのだ。
25分歩いて、8時50分到着。100バーツ(約330円)。 すごい人出だ。黄、白、青などのそろいのシャツの集団が目立つ。特に、黄色は国王在位60年なので、王の長寿を願うシャツで、よく見るといろいろなデザインがあり、着ている人数も一番多い。白や青は学校の遠足のような生徒の一団など。
軍の学校の生徒も集団で見学していた。離宮内では、各所に警備の兵士が配置されているが、軍の生徒はあちこちでタイ式の敬礼をしていく。返礼する兵士も大変だ。 離宮内には、タイ風、中国風、西洋風の建築が入り乱れている。 アユタヤ王朝時代の17世紀に離宮になったようだが、現在でも使われていて、そのためか西洋風の建築が比較的多い。
右の建物は新しいらしく、冷房つきだった。そのため、じっくり見ているフリをしながら休憩を兼ねた。 この中にも玉座らしきものがある。仏像を拝むときと同じように、座って玉座を拝む人も多い。
庭園もなかなか面白い。動物の形をした植え込みを作って、きれいに整備されているのだ。鹿や象、うさぎ、ねずみなど楽しく見て回った。 駅までの距離の半分くらいまで駅に近づきながら、再び、出入口に戻る。
池も多く、噴水などで美しい。出入口をから退場すると、たくさんの大型バスやワゴン車が目に入った。ここにやってくる人たちのほとんどが、これらに乗ってくるのだろう。 一部の個人客はバスを利用するのだろうが、列車利用者は皆無に近いようで、駅に向かって歩いていたのは、自分の前にも後ろにもいなかった。
バンパイン11時7分発の列車は普通列車のようで、ロッブリー着が12時35分と、1時間半乗るのに、運賃は16バーツ(約54円)。 3等車は木製の座席で、これに揺られ続けるのは少し苦しい。車内には、バンパインで見かけた黄色いシャツと似たものを着ているグループもいる。バンパインから乗ったのではなく、国王長寿祈願シャツが流行しているのだろう。
車内には、次から次へと物売りが回ってくる。上の画像にも、ポリ袋入りジュースを販売するすぐ後ろに、えびせん風の菓子を売る人が写っている。 自分も、昼食用のミニ弁当を買ってみた。15バーツ(約50円)。辛口の揚げ物やチキンのそぼろが白飯の上にかけてある。ほかに目玉焼ののっているものもあった。
これだけでは足らなかったので、もう少し何か食べようと、物売りを観察して、結局、具入り粥を買った。10バーツ(約34円)。ほどよくさめていて、スムーズに食べられた。 これらの空き容器を、座席の下に入れていたら、風で他の人の足元に飛んでいった。容器を窓から捨てる人もいたが、窓から捨てるほうがよかったのかな。
15分ほど延着してロッブリー着。まず最初に帰路の列車の時刻の確認だ。窓口で尋ねると、本来は14時53分の列車が遅れていて、16時25分発になるとのこと。その次の列車は17時台だが、19時までにドンムアン空港に戻りたいので、遅れている列車に乗ることにした。右は駅舎で、わりと新しい。 ロッブリーでの滞在時間は、3時間40分くらいあるので、駅の近くにみどころがあるこの町で、主な遺跡などを回るには十分と判断。
(1)ワット・プラ・シー・ラタナー・マハータート 駅のすぐ前にある遺跡である。外側からもある程度見えるが、入場した。クメール風、スリランカ風といろいろな塔がある。ロッブリーでは、ここが中心的な寺院であったのだろう。
(2)プラ・ナライ・ラチャニウェート宮殿 17世紀に建てられた宮殿の跡。タイ風と西洋風が混じっているもので、窓がアーチ型になっていることが西洋的だ。 同じ敷地内の現存する建物が国立博物館になっていて、こちらも見学した。
(3)チャオ・プラヤ・ウィチャエンの家 フランスの太陽王ルイ14世の大使のために造られたもの。その後、ナライ王の外交顧問的なフランス人が住んだが、彼のタイ名が建物の名になっている。左の半円型の玄関階段などが西洋風だ。
(4)プラーン・ケーク 街中の道路の交差点の中にあるような遺跡。クメール風の建物が島のようになっている。
(5)プラ・プラーン・サム・ヨート 線路脇に建つ3つのクメール風の仏塔。この日は工事をしていて、入場はできなかったのだが、柵の外から見るだけでも十分、その様子はわかった。
(6)サーン・プラ・カーン ここは現役の新しい寺である。寺自体はどうということがないのだが、ここを有名にしているのがサルである。階段の下の両側にもサルの像がある。 この寺の周辺には無数のサルが出没している。そして、参拝に来た人のお供えの花を奪って食べるなどの悪さを目撃した。
参拝客なのか寺の関係者なのかよくわからなかったが、大きな袋から、たぶん賞味期限切れの乳酸菌飲料を大量にばらまいた。サルは、うまく飲み口のシールをはがして、おいしそうに飲んでいた。地面にこぼしてしまった飲料を飲んでいるサルもいる。
大きな容器に飲料をまとめて入れた人がいて、そこにはうまくシールをはがせない子サルなどが集まっていた。
サルは寺の周囲にもたくさんいて、寺の前にある足洗い場は、サルに完全に占拠されていた。 このほか、民家の屋根を伝っていくサルもいる。街中では、つねにサルに気をつけていないと、モノをとられかねない。
街歩きは3時間ほどで終え、しばらく駅で休憩。 遅れているという列車は、快速だそうで、ドンムアンまで40バーツ(約135円)。座席はシート張りだったが、片側3人掛、片側2人掛となっており、ひとりあたりの席の幅はきわめて狭い。でも、3人掛のところ、2人が座っている状態なので、狭い思いをせずにすんだ。
ドンムアン着は18時半ごろ。下車客のうち、空港への連絡通路に向かったのは、自分を入れて2人。鉄道はまったく空港アクセスの役割を果たしていない。 空港ではすぐにチェックイン。売店のエリアに入ってもまだ4時間半の待ち時間がある。それで、まずシャワールームへ。320バーツ(約1060円)。続いて、夕食。トムヤム風のラーメン。そしてネットで少し遊んだ。
出発1時間前に出発ゲートへ。予想通り、1階のバス連絡のゲートであった。ここは5つのゲートがあるのだが、この時間帯はゴールデンタイムでさまざまな行き先の便が集中していて、待合室はあふれかえっていた。 やがて搭乗。しかし、乗ってこない客がいるとかで、出発は1時間遅れ。
出発直後に軽食があったあとは、ずっと休んでいた。到着1時間半前に朝食。和風もあったが、中華風のチキンヌードルを選んだ。 関西空港着は、予定よりも30分遅れの8時ごろ。この日は、利用者が年間最多だったらしいが、税関では荷物を全部開けさされてしまった。スリランカでは不愉快なことがいくつかあったが、それを象徴するような旅の締めくくりであった。(終)
|