2 日 目    高原温泉の沼めぐり

 

 この日は6時前に高原温泉に向けて出発する。沼めぐりの予定だ。4時過ぎに目覚めたので、まずは朝風呂。朝から温泉につかるってのは気持ちがいい。

 風呂から戻って、昨夜に作っておいてもらったおにぎり弁当で朝食。食堂でいただく朝食よりはグレードが低いが、朝食をパスして代わりに何か買っておいて食べるよりはこの方がいい。

 登山客はこの弁当を昼食用にして、朝は自分で調達する場合が多いのだろうが、自分の場合は、昼は高原温泉の旅館で食べたいので弁当を朝食用とした。

 
 朝は曇っていたが雨は降っていなかったのだが、予報では降水確率80%なので、下半身は泥除けもかねてウインドブレーカーにして、上半身もいつ雨が降ってきてもよいようにウインドブレーカーをすぐに着られるようにしておいた。

 バスの左手に写っているのが泊まっていた宿で、バスターミナルまで3分ほど。もっとも6時2分出発だが、10分前に着くようにやってきた。すでに十数人の列ができていて、なんとか座席にありつけたが、ギリギリにやってきて立席になった人も多かった。

 レイクサイトに到着。乗ってきたバスは銀泉台行きになり、高原温泉に向かう自分は乗り換えた。ほとんどの客は銀泉台に行く上、レイクサイトからの客も大部分が銀泉台行きに乗ったので銀泉台行きはスシづめだった。それにひきかえ高原温泉行きは数人の乗り換え客とレークサイトから乗った数人でまだ空席があった。

 そうなったのには理由がある。銀泉台のほうは少し上がっただけでも紅葉が見られるようになってきていたのに対し、高原温泉の沼めぐりでは、まだかなり奥に行かないと紅葉が見られないからだ。

 このバス、窓には布テープで目張りがしてある。舗装していない道路を走るため、土ぼこりが舞い上がる。それが入ってこないようにするためだ。もっとも、雨上がりの朝だったので、このときは土ぼこりはほとんどなかった。

 さて、バスを使った旅行者の場合、高原温泉と銀泉台に行くのは紅葉の時期に限る。紅葉の時期、細かい日程は年によって変わるが、9月中旬から下旬にかけて、マイカーの銀泉台と高原温泉への乗り入れが禁止になり、レイクサイトの駐車場に車を止めて、シャトルバスで入山することになるのだ。また層雲峡とレイクサイトの間にも若干のバスが運転される。

 普段の時期は、層雲峡から銀泉台、高原温泉にはバスが走っていない。だから、紅葉の時期に行くのが便利なのだ。今回は高原温泉に行くのだが、いづれ銀泉台も行ってみたいと思っている。

 
 25分ほど森の中を走って高原温泉に到着。7時少し前。層雲峡から1時間弱。

 目の前に高原温泉ホテルがあるが、向かうは100mほど離れたヒグマ情報センター。その前に手洗いも済ませておく。

 

 
 高原温泉の沼めぐりのコースは、ここで入山名簿に名前を書き、諸注意を受けてからでないと入れないようになっている。つまり、表の入口とは別に登山路の入口があるのだ。

 最近のヒグマは人を怖がらなくなってきているようで人を見ても逃げない場合があるとか。それでも人が逃げだしてはいけないとのこと。3日前には銀泉台で警備員のリュックを小熊が持ち去り、弁当を食べたということだ。

 高原温泉の一周コースは閉鎖されていないようで、一周することにした。7時20分行動開始。

 
 左  コースの中には木道がついているところもあるが、木道は多くはない。木道のないところの中には、雨のためにぬかるみになっていたところも多かった。

 下左  コースはアップダウンがたくさんあって、石のころがる道を上がり下がり何度もした。それでも上り一方というのよりは歩きやすかった。

 下右  大きな沢を越えるところには仮設の橋がつけられていた。

 
 
  40分ほど歩いて8時ごろに分岐点に到着。しかし、高原温泉からまだ0.9kmしかきていないようだ。アップダウンがあると進まないものだ。

 今日は一周できるのだが、一周可能であっても、必ず左回りで行くように言われている。

 コース中には警備員が配置されているのだが、左回りで行くことを前提にして、15時閉山時間が近づいたり、熊が出没した場合に、先に進むのを止めるようだ。

 
 右回りコースのほうにはロープが張ってあり、立ち入らないように書いてある。左回りコースを通って、一周する場合は、最後にここに出てくるのだが、そのときはこのロープを乗り越えて外にでる。
 
 さらに30分ほどアップダウンを繰り返して、はじめて視界の開けた広いところに出た。同時に紅葉が目にはいってきた。

 ここから20mほど分岐した木道を歩くと最初の沼、土俵沼があった。

 
 

 

 

 

 

 最初の沼、土俵沼。8時30分到着。ずっと視界のきかない道を歩いてきたので、水面が広がっているのを見ると気持ちがいい。

 
 次のバショウ沼までの間の坂を上ったところから、山頂は見えないものの、そびえている山を眺められた。緑岳か赤岳であろうか。

 かなり紅葉している木も多少は見られる。

 

 
 

 

 

 

 

 8時40分、バショウ沼到着。水面に紅葉が映っているのがきれいだ。水芭蕉の季節にも見にきたいところだ。

 
 

 

 

 

 

 8時50分、滝見沼到着。もう少し後だと、紅葉が沼に映ってもっときれいだろうな。

 
 全体としてみれば、紅葉はさほど進んでいないが、1つ1つの木を見れば、結構きれい。

 このあたり、ミヤマリンドウの青い花も多い。紅葉と高山植物を同時に見られるとは思わなかった。 

 

 

 
 

 

 

 

 緑沼には9時到着。監視員が配置され、食事も可なので、もってきた菓子などを食べて少し休憩。残念ながら、ここは紅葉はほとんど見られなかった。ここを過ぎると傾斜が急なところが多く、登山という雰囲気になる。

 
 

 

 

 

 白いのは霧ではなく、小さな噴気孔から出ている湯気。いくつか噴気孔があり、硫黄のにおいも少しする。湯ノ沼という名がついているが、沼の水が温かくなるほどではない。

 
 

 

 

 

 

 9時30分ごろ到着。ルートから20mほど入ったところにある。どうして鴨っていう名がついているのかな。鴨はいなかった。水面に映った山はきれいだが、ここも紅葉はなし。

 
 名前がない小さな沼があった。まん丸い形をしているのが興味深い。

 これを過ぎるとエゾ沼だ。エゾ沼は沼のふちに道があって、気をつけないと沼にはまってしまいそうだ。大雨のあとなどは沼の水位があがって、道が水没していることもあるという。幸いそういうことはなかったが、沼のふちに沿った道は緊張した。

 
 

 

 

 

 エゾ沼は9時50分ごろ着。沼めぐりコースの中では一番紅葉が見事だった。高山らしい雰囲気も満点だったが、このころから小雨が降りだした。上半身もウインドブレーカーを着る。

 
 

 

 

 

 式部沼には9時55分ごろ到着。沼の周りには紅葉が少なかったが、次の大学沼に向かう途中はかなり紅葉していた。このあたりが森林限界で、森林よりも草原が多くなってきた。

 
 

 

 

 

 大学沼には10時着。ここは雪渓が見え、それが水面にも映っているのが特徴である。ここから高原沼までは木がほとんどなく、風と雨にさらされての歩行であった。ここも警備員がいた。

 
          

 

 

 

 

 高原沼には10時20分到着。ここがコース中の最高地点である。沼はかなり下のほうにあって、見下ろす。ほかの沼とはちょっと違った感じだ。ここにも警備員がいた。

 
 高原沼から先は一周コースをたどるか、来た道を引きかえすかどちらかになる。一周コースは熊がでて閉鎖になることが多いので、せっかく回れるので一周コースを選んだ。

 もっとも、歩いた感想は、沢下りや急斜面の下りがあって小雨の中では歩きにくかったうえ、景色はここまでのコースに比べてずっと単調で面白くない。再び高原温泉に来ることがあれば、次回は高原沼から引き返そう。

 15分ほど進むと、高原沼のそばまで下ってきた。

 
 
 上左  風倒木のトンネルを腰を曲げて歩いていく。平坦なのだがなかなか歩きにくい

 上右  高根ヶ原方面への道の分岐点にやってきた。このとき10時30分、高原温泉には12時に帰れるかなと思った。でも、それは甘かった。ここから、左回りコースとの合流点まで2kmなのだが、2時間かかることになった。

 左  高根ヶ原方面への道は閉鎖されていて、警備員もこの分岐点にいた。高原温泉のコースは他の登山路とはつながっていない。

 
 

 

 

  

 10時45分ごろ空沼(からぬま)に到着。この沼は本来は一番大きいのだが、秋には干上がってしまっており空沼と呼ばれる。ほんのわずかに水があったが、この一面が沼だとはなかなか想像しにくい。

 
 空沼をすぎるとゆるい下りが続く。

 小さな噴気孔から湯気が出ているところがあった。噴気孔は3箇所ほどある。

 
 

 

 

 

 

 噴気孔の付近は高山植物が咲き乱れていた。青いのはミヤマリンドウ。ピンクなのはチングルマだろうか。

 
 沢に沿って下る道になった。沢の中を歩くことはないが、沢のすぐそばを歩く。またかなりの急傾斜の下りもあるのだが、石がぬれているし、中には苔むしている石もあって、とても滑りやすくなっていた。慎重に歩いたのだが、大きな石を下るときに滑ってしまった。

 下左  流れの緩やかなところで何度も沢を横断した。なかなかスリルがある。

 下右  道のはっきりしないところは→がある。それでも、なかなか歩きにくい。

 
 
 やがて沢沿いのコースは終わったが、再びかなりの上りがあった。これがまたきつい。

 上がってしばらくすると、下方で湯気が舞い上がっている。ヤンベ温泉だ。沢のそばで熱湯が湧出しているので、それを避けるために登山路はいったん尾根に出るようになっているようだ。

 それにしてもものすごい湯煙だ。残念ながら、湯の出ているところまでは見えない。

 
 このあと、今度は急斜面の下りが続き、これも滑らないように慎重に下った。途中、ぬかるんでいるところに足をつっこんでしまい靴がぬげそうになった。

 12時20分、左回りコースとの分岐点に戻ってきた。これでヤレヤレ。もう右回りコースは来なくてもいいと思った。

 このあと30分ほどかけて、朝通った道を逆に高原温泉まで戻った。

 
 やがて自動車の音が聞こえてきて登山口に戻った。最後に沢の水で靴を洗うようになっていて、ぬかるみで汚れた靴を洗ったあと、入山名簿に帰着時間を書いて終わり。

 このあと大雪高原山荘に向かった。ちょうど13時で、シャトルバスが出発するところだった。もう少し早く 下山できて、12時30分のバスに乗れれば、銀泉台行きのシャトルバスに接続していて、銀泉台にもいけたのだが、間に合った場合でもこの山荘で昼食と入浴するほうを優先しようと思っていた。

 

 高原温泉は、北海道で一番標高の高い温泉だという。標高は1260m。

 高原山荘ではまず昼食。日帰り入浴セットがあって1500円だが、券は売り切れ。う〜む、朝にバスで到着したときに券を買っておくほうがよかったかな。あるいは、前年、旭岳温泉の湧駒荘でやったように電話で予約しておくか。

 やむを得ず、カレーセット1000円と入浴券700円を買ったが、日帰りセットのほうがよかったなぁ。

 

 食事のあとは入浴。入浴客がひっきりなしにやってくるので内部の写真撮影はできなかったので、入口だけ撮影。

 硫黄のにおいが何とも言えない。層雲峡よりも温泉の気分にひたれる。湯は少し白濁している。

 露天風呂があり、曇っていたが、外気に触れての入浴は気持ちがいい。洗い桶と椅子が木でできているのもいまどき珍しくていい。ぜひ機会があれば、泊まってみたいと思った。

 

 しばらくの間、開放されている大広間で休憩した。ついでに荷物の整理。

 冷たい甘酒を販売していたので、いただいてみた。

 甘酒を買いに玄関まで行って大広間に戻る途中の廊下の写真に目がいった。昭和43年に昭和天皇がここを行幸されている。またこの山荘の裏手にある泥温泉を見にいらっしっている。

 

 それで泥温泉も見に行くことにして、シャトルバスの発車時間より早めに大広間をたった。

 玄関には日本秘湯を守る会のちょうちんがかかっている。旭岳温泉の湧駒荘と同じだ。

 

 泥温泉を見に行った。泥のたまたっところが沸騰している。危険なので近づいて見ることはできない。

 

 15時発のシャトルバスに乗車。レイクサイトに15時25分に到着。すぐに層雲峡行きのバスに乗り換えて、16時に層雲峡に戻ってきた。

 すぐに宿に戻り、入浴。

 

 この日の夕食は洋風を頼んでおいた。一番向こうに見えるのはチーズフォンデュ。 和風と同じく質、量とも申し分ない。

 ただ前日と同じもの、似たものも出されていて、それらが半分。

 

 

 

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