2   ク ス コ と 近 郊

 

 リマの空港で夜明かしをどこでするか。いったん建物の外に出て、すぐ出発便用の入口から中に入った。出発カウンターの前には、ベンチが多少あるが、すでに埋まっている。それで、座るところを求めて、ターミナル内を探検。セキュリティエリアの入口近くに、深夜でも 開いているスナックコーナーを発見。それほどの客はおらず、ここで夜食でも食べながら座っていることにした。

 いくつかの店があったが、マクドナルドでハンバーガーなどを注文。作るのにかなり待たされるが、時間つぶしには都合が良い。食べ終わったあとも、包み紙などののったトレイを前に休憩。2時から4時までねばった。途中で、掃除が行われ、コーナー内の別のエリアに移動させられたが、ずっと座り続けられた。

 4時過ぎに、重い腰をあげ、国内線の出発カウンターに向かった。どこかで、国内線でも2時間前にカウンターへ、と書いてあったような気がしたからだ。搭乗予定のスターペルー航空のカウンター前には2,3人が並んでいた。自分が並ぶと、まもなく後ろに行列ができた。4時30分ごろチェックインがはじまった。

 自分の場合は、現地の日系旅行社であるナオツールにさまざまな手配を依頼したのだが、リマ・クスコ間の航空券もここでとってもらった。事前にパスワードが送られてきて、パスポートを提示して、パスワードを告げれば、搭乗券が渡されるという仕組みだった。紙の航空券がないので、Eチケットである。ただ、紙に印刷したものをまったく持っていないという方式は初めての経験だ。

 国内線の待合室でさらに1時間ほど座って待った。早朝というのに、たくさんの人でいっぱいである。クスコ行きは早朝に集中しており、ほかの行き先でも早朝発の便があるようだ。出発時刻の5時50分になって、ようやく搭乗開始。まだ深夜の続きで、あたりは真っ暗だ。

 20分ほど遅れての出発。出発後、まもなく夜が明けた。わずか1時間ほどのフライトだが、簡単な食事が出た。しかし、パンはかさかさで美味しくなく、ほとんど食べなかった。黄色い飲み物は、インカコーラ。ペルーの代表的な清涼飲料水で、一般のコーラに比べて、炭酸はきつくなく、やや甘い。気の抜けた炭酸飲料のような感じだ。 

 やがて、日が差しこんできた。樹木が生えておらず、土がむき出しの山々が延々と続いている。そのうちに街らしきものが見えてきたかと思うと、クスコだった。

 クスコは海抜高度3200m。降りた途端、空気が薄い感じが伝わってくる。大きく深呼吸し、ゆっくりと歩いた。荷物の受け取りを待つ間、歓迎のフォルクローレが演奏されて、雰囲気がつくられる。荷物がでてくると、すぐに建物の外へ。自分の名前を書いたカードを持っている人はすぐ見つかった。ホテルまでは15分ほど。

 向かったホテルは、クスコの街の中心のアルマス広場からほんの少し路地を入ったところだということは事前にわかっていたが、現地についてみると、とても便利なところだった。送迎車を降りたのが、アルマス広場。街のど真ん中だ。8時に到着。

 そして、上の画像に写っている広場やカテドラルに背を向けて撮影したのが下の画像。画像の右下にホテルの入口がある。大通りから10mもないという近さだ。ホテルはロレトという名。 入口の上に HOSTAL LORETO と書いてある。

 ホテルにチェックイン後、部屋の清掃のため、コカ茶を飲みながら、しばらく待つ。コカ茶は高山病の防止に役立つらしい。コカの葉をカップにいれ、湯を注いだものがコカ茶だ。コカは茶の一種というわけではないから、ハーブ茶の仲間といってよいだろう。

 コカ茶を飲みながら、旅行社の人から説明を受ける。日系の旅行社だが、この日やってきた人はペルー人で、英語で説明。この日は13時30分に、明日は7時に車がくるという。7時というのはこちらから頼んでおいた時間だ。そして、この日の午後に参加する英語ツアーのチケットとクスコ市内外のみどころの共通入場券を渡された。翌日以降のチケットは、翌日に渡すということだ。説明を終えた旅行社の人が帰ってしばらくして、掃除が終了。部屋に入る。電気ストーブがおいてある。夜は冷えるのだろう。

 これで、やっと横になれる。家を出てから40時間の道のりは長かった。8時30分だったので、11時30分ごろまで眠ることにした。シャワーも使えるようだったが、使わなかった。このときだけでなく、この日、ツアーを終えてホテルに帰ったあとも。それは、体を温めると、高山病になりやすいとどこかで読んだからだ。

 横になってしばらくすると、まもなく熟睡した。 目をさましたのは12時過ぎ。少々、寝すぎてしまったようだ。13時30分にツアーの迎えがくるので、それまで食事を済ませなくちゃならない。急いで出かける用意をして、アルマス広場近くのレストランへ。朝、旅行社の人がおすすめだと言っていたプカラという店に行った。日本人が経営しているレストランとガイドブックには書いてあり、メニューも日本語と写真入りだ。客にも日本人らしき人が何人かいる。

 注文したのは、アロス・コン・ポロ Arroz con polloで、Arrozが米、Polloが鶏肉なので、チキンライスということか。ライスはチャーハンで、鶏肉と野菜がのっている。

 食後には、コカ茶も注文。料理とあわせて23ソーレス(約790円)。観光客向けの店なのでやや高めなのか、物価全体が結構高いのか、まだよくわからない。

 コカ茶を楽しんでいたら、すでに12時10分。急いでホテルに戻り、ツアーに出かける準備。まもなく、ノックがあり、車がきているという。外に出てみると、ここからツアーバスにのるのではなく、最初の訪問場所のコリカンチャまで車で行き、そこでバスを待つのだという。

 5分ほどで、コリカンチャ到着。コリカンチャとは太陽の神殿ということだが、スペインの征服後、神殿は土台を残して破壊され、土台は新たに建設されたサント・ドミンゴ教会の土台に転用された。そのため、現在、この場所に建っているのは教会であって、インカの神殿ではない。でも、ここにやってくる観光客は、神殿の土台を見るためにやってくるのだ。

 さて、教会の前でしばらく待ち、14時前にツアーの本体がやってきた。大型バスで移動し、英語ガイドのついたツアーだ。全体で20人程度。自分以外は欧米系の観光客である。

 中に入っても、目につくのは西洋風の建築。コリカンチャの土台が残っているのは、中庭を取り囲む回廊の外側。

 下の画像は、土台部分の石組み。クスコで大地震があったとき、土台の上に作られた教会は破壊されて、土台の部分はびくともしなかったという。インカの石組みはたいへん精巧なことが近くで見てよくわかる。

 インカ時代には、コリカンチャの外側には金の帯がつけられていたという。金は征服者によってはがされ、ヨーロッパに持ちさられた。

 下の画像は、生贄の家畜を処理した台。リャマや羊がここで首を切られたのだろう。

 ついでやってきたのはカテドラル。ホテルのすぐそばまで舞い戻ってきた。これまた、インカ時代にはピラコチャ神殿があり、神殿を取り壊した上に建てられた教会だ。たいへん大きな教会で、主祭壇のほかに、小さな祭壇がある。多くの宗教画がかけられたりしていて、その都度ガイドが説明するが、これは退屈。天井はとてつもなく高い。内部は撮影禁止だった。

 ここまで見学して、すでに時間は15時半。果たしてこれから4つの遺跡を見てまわれるのだろうかと心配になった。

 クスコの街はずれにサクサイマワンがあった、征服者に対抗して、インカ帝国はここを拠点にしたが、やがて滅ばされた。ここの広場では、冬至である6月24日にインティラミという祭りが行われる。インカ時代の儀式が執り行われる、とても盛大な祭りで、その前後はクスコのホテルの予約が難しいらしい。

 ここの石組みは、とても大きな石を使っている。石は同じ形ではなく、ぴったりとかみ合っていないようなところもあるが、よく崩れないものだ。しかし、土台以外は残っていない。土台の上には建物があったのだが、スペイン人の征服者が破壊し、その石は、スペイン風の建築物の材料にするために持ち去られたのだ。

 サクサイマワンから見たクスコの街。茶色い屋根が多い。谷間が家で埋め尽くされていることがよくわかった。サクサイマワンを出発したのは17時。日暮れも近いが、まだ3つの遺跡が残っている。

 ここで高度計を見ると3700m。ほぼ富士山と同じ高さだ。しかし、谷間に広がるクスコ市街を見ているとそんな感じは全然しない。

 次はケンコー。自然の石をくりぬいた洞窟の中に、祭壇が設けられている。洞窟の中は明かりがなく、すでに薄暗くなっていて、少々歩きにくかった。

 続いてプカ・プカラ。下の画像では、やや遠くに写っているもの。ここは、なぜか車窓見学となってしまい、近くで見ることができず、バスの中から撮影した。最後に行くタンボ・マチャイの沐浴場の入口にあり、その警備のための砦の役割を果たしていたらしい。

 最後にタンボ・マチャイ。聖なる泉が湧き出ている。雨季と乾季の違いなく、いつも同じ水量がある。この水源がどこにあるのかよくわからないらしい。この水を利用して、インカ時代には沐浴場になっていたとのこと。

 17時30分に見学終了。このあと、クスコに戻る途中で、アルパカ製品を即・する工房に立ち寄った。ここで予定時間を大幅に超えて停車。買い物に夢中になる人は洋の東西にかかわらず多いものだと思う。工房にいる間にあたりは真っ暗になった。19時前にアルマス広場に戻ってきて、下車。バスはこのあとホテルを回って客を降ろしていくようだ。

 結構、充実した5時間のツアーだった。このあと、アルマス広場に面したインカ・グリルといいうレストランで夕食。アヒ・デ・ガジーナ Aji de Gallina を注文。ペルーの唐辛子イエローペッパーとチーズを混ぜたソースに、茹でた鶏肉をまぶして出来た料理。ペルー風のカレーといえるだろう。

 食事の後、ネットカフェで遊んで、ホテルに戻る。途中、ミネラルウォーターを買ったら、1ソル(約37円)だった。一番心配していた高山病の症状は何も現れずにほっとしたが、油断は禁物。この日は、シャワーはやめておいた。

 

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