(2) イスタンブルその1

イスタンブルでは2日すごし、夜行バスでカッパドキアかアンタルヤに向かうことにする。最初は、西トルコ周遊を考えていたんで、ルート的にはチャナッカレかサフランボルが近いのだが、近すぎて夜行バスがあるかどうか、あっても極端に早い時間につくのではないか、とか考えた結果である。

2日間は、曜日でいうと日・月。トルコでも月曜日には閉館になる名所が、博物館系を中心に多い。なるべく、閉館の影響をさけることを考えて、日曜にイスタンブル新市街、月曜に旧市街を回ることにした。

宿泊したペトロールホテルは、路面電車の「スルタンアメフット」停留所のすぐ前。停留所のそばの小屋で、10万TLでジェトンを買い、それを停留所の入口で投入する。(トルコでは100万TL単位でお金のやりとりをするケースが多かった。100万TLは、1ミリヨンと呼ばれる。で、この旅行記では、1MTLと書くことにする。2003年8月現在、1MTL(100万トルコリラ)=約88円であった。)

 路面電車(「スルタンアメフット」駅にて)

ここで、最初から失敗。トルコの車は右側通行、路面電車も右側通行。よく考えないで、新市街に行くのに、乗るべきホームと反対側のホームに入ってしまったのだ。このまま外に出るのもしゃくなんで、逆方向の電車にのって、メトロとの接続駅まで行くことにした。「ラーレリ」で下車し、メトロの「アクサライ」駅へ。じつは、そのすぐ近くに路面電車の「ユスフパシャ」があった。「地球の歩き方」をみると、「ラーレリ」が乗換駅のように書いてあるが、これは間違い。絶対に「ユスフパシャ」で乗り換えるべきだ。

さて、「ユスフパシャ」から、さきとと逆方向の電車で、終点の「エミノニュ」へ。「エミノニュ」は、ガラタ橋のたもとにあり、このあたりで鯖サンドが売られているらしいのだが、朝10時ではまだ売っていない。徒歩でガラタ橋を金角湾を渡る。10分ほどで新市街側に到着。ここから、チュネルという地下ケーブルカーで、新市街の中心に向かう。途中に、ガラタ塔があり、上るつもりだが、帰りにはチュネルを使わず歩いて坂道を下り、そのときに立ち寄ろう。わずか2分ほどで終点に到着。ここからは、新市街の中心である「タクシム」まで路面電車が走っている。こちらの路面電車は、いったん廃止されたものが復活したレトロ調のもので、市民の足というより、それ自体が観光名所として機能しているようだ。

「タクシム」から、たくさんのバスがでている。これから向かうドルマバフチェ宮殿はどのバスに乗るんだろうか。結局、よくわからないので、そう距離もないと思ったんで歩くことにした。だが、これは判断ミスだった。ガイドブックの地図をみると1キロ少々しかないのだが、実際には、「タクシム」は高いところ、宮殿はボスポラス海峡に面した低いところにあり、道路が九十九折のようにまがりくねっているのだ。3キロ近くは歩いたと思う。

 ドルマバフチェ宮殿をバックに立つ衛兵

ようやく宮殿に到着したと思うと、今度は入場券を買う長蛇の列。30分ほど並ぶ。本宮殿とハレムをあわせて、入場料は、14MTL。(約1230円) さて、本宮殿、ハレムとも、ガイドに連れられて40分ぐらいかけて見て回るようになっている。この宮殿は、19世紀にトプカプ宮殿にかわるスルタンの政治と生活の本拠としてつくられたため、一見するとヨーロッパの宮殿のように見えるが、装飾などを細かく見るとオスマン風の彫刻がほどこされていたりする。入口のところでは、衛兵が不動で警備をしている。共和制になってから、ここがアタチュルクの執務場所になり、この宮殿でアタチュルクが亡くなったためらしい。

すべての見学を終えると、1時。しばらく休息の後、タクシーで軍事博物館に向かう。下りはともかく、上りはとても歩けない。まだ、トルコの事情がよくわからないので、ボラれるのを心配しつつ乗車するとメーターがあったんで一安心。ところが、出発して5分ほどして大いなる不安が襲う。最初の料金は、たいへん安いものだったんだが、料金が変わるのがたいへん早い。メーターに細工しているんじゃないか。結局、軍事博物館に到着したころには、30MTL(約2640円)にせまるくらいになっていた。で、どうしようかゆっくり考えながら、20MTL札を出してみた。もっとだせ、といってくるんじゃなかと思いつつ。運転手は、財布をのぞいていたようで、5MTLのほうをだすように言っている。よくわからないが、5MTL札を出すと、1.5MTLおつりをくれたんで、3.5MTL(約310円)だったことになる。10分あまり、4キロほどだったんで、日本の半額くらいで、これは妥当である。しかし、あのメーター、いったい何だったんだろう。

軍事博物館は軍の施設のなかにあるため、入場のさいには持ち物検査がある。3時から、軍楽隊の演奏があるので、それまでの1時間で、外庭と館内展示を見たが、あまり面白くなかった。だが、3時からの軍楽隊はすばらしかった。オスマン風の衣装を着て、トルコの伝統音楽をいろいろ演奏していたが、突然、「さくらさくら」の演奏がはじまってびっくり。日本人が多いんでサービスだったんだろうか。1時間の演奏はあったいう間に終わる。

 軍楽隊の演奏

「タクシム」まで歩き、さらに路面電車の通るイスティクラール通りも歩く。この途中、昼食とも夕食ともつかない食事をロカンタでとった。さらに、チュネルの乗場からからは、歩いて坂道を下り、ガラタ塔に立ち寄る。塔の高さはさほどではないが、塔のある位置が高いところにあるので、旧市街側やボスポラス海峡をへだてたアジア側などの位置関係がよくわかる。ボスポラス海峡は、海というより川のような感じである。

ガラタ橋を歩いて「エミノニュ」に戻ると、今度は鯖サンドを売っていた。船の上で調理して、船に乗っている売り子と陸にいる客がお金と品物をやりとりする。焼いた鯖をフランスパンにはさんだものであるが、骨はとっていないので、背骨がついているときとついていないときとがあう。

 鯖サンドを売る船(遠景にはガラタ橋の一階がみえる)

イスタンブル独自の、公共交通機関共通の乗車方法に「アクビル」を使う方法がある。日本のプリペイド式のカードみたいなものであり、これを使うと運賃も割引になる。そして、奇妙な形をしている。その売場をみつけたんで、購入。もっとも、容器代のようなお金も必要なんで、旅行者がこれを使うと、もとをとるのが難しいだろう。

このあと、近くの船乗場から、対岸にあるハレムのオトガル(トルコではバスターミナルのことをオトガルという)へ向かう。この時点で、あすどこへ向かうか決まっていなかったが、結局、アンタルヤじゃなくカッパドキア行きの切符を売っている会社を先に見つけたので、あすは夜行バスでカッパドキアへ向かうことに決定。このとき、トルコのオトガルの特徴がわかったんだが、なれない者にとってはとても利用しにくいのである。ハレムのオトガルだと、50くらいバス会社の事務所があって、それそれの事務所の前からバスが発車する。しかし、どのバス会社がどこ行きのバスを運行しているかは、各会社に聞かないとわからないのである。しかも、各会社では、ほとんどの場合、どこ行きが何時何分とかおう掲示をいっさいしていないのである。各会社で、どこそこ行きのバスがあるか、あるのなら何時発で値段はいくらかと聞いて回るのである。旅行者にとっては、とても不便である。

切符を買ったあと、フェリーで「エミノニュ」に戻り、国鉄のシルケジ駅を見学。かつては、オリエントエクスプレスの終点であったらしいが、今は、1日1往復の国際列車が走るだけで、発着のほとんどは近郊電車である。電車は結構本数が多くて、日中は30分間隔、朝夕は15分間隔で運転されている。路面電車で「スルタンアメフット」にあるホテルに戻る。