3日目  江 陵 日 帰 り

 

 江原道の海岸沿いの地方の中心になっているのが江陵(カンヌン)である。旅行前には、江陵に泊まるか、江陵から夜行ムグンファ号でソウルに向かうかという選択で悩んでいたが、結局、束草(ソクチョ)に2連泊することにし、江陵へは束草から日帰りで行くことにした。なぜかというと、統一展望台からの帰り、金日成(キムイルソン)の別荘がある花津浦(ファンジンポ)の近くを通ったのだが、バスから案内板を見て、無心に行きたくなったからだ。この別荘のことは、出発前から知っていたが、行くつもりはしていなかった。

 朝6時に起きて、朝食のパンを食べながら、江陵をどうまわるか作戦を練る。江陵では行ってみたいところが、ほとんど市の郊外にあるので、できるだけ市内バスを使うにしても、なかなかバスがこない場合などは、バスにこだわらずタクシーを使うのがよさそうである。江陵へはバスが頻発しているようで、前日にバスターミナルの掲示をよく見てみたが、時刻の掲示がなかった。8時前に旅館を出発。宿の主人に、ハルド モムルゴ シブンテヨ といって、今日の分の25000Wを渡す。

 バスターミナルに着くと、江陵行きのバスが止まっていたが、残念ながら出発直前でそのバスには乗れなかった。チケットを買うと8時25分になっていた。このバスは釜山行きで、江陵では途中下車だった。寝過ごしたりしないように注意しなければ、、、と思いつつ、バスの中ではほとんど居眠りしていた。9時40分に江陵に到着。

 江陵のバスターミナルは、以前は、国鉄江陵駅の近くに、高速と市外があったのが、近年、市の中心からは2kmほど離れた場所に、高速と市外を一体化したターミナルが新設されたようだ。束草の市外ターミナルと比べると、とても大きなターミナルだ。まず、帰りのバス時刻を調べたが、初発と終発だけが書いてある。頻発なんで省略されている。

 最初に行くのは、烏竹軒(オジュッコン)と江陵博物館。バスターミナルの前のバス停に出ると、ありゃりゃ、ガイドブックを見て、乗る予定をしていた系統が案内図に書いていないではないか。系統番号の変更がおこなわれたようである。(持参したガイドブックは、地球の歩き方の03-04年版。帰国後、最新の04-05年版を見たところ、系統番号が変わっていた。実は、04-05年版は、出発前に立ち読みしていて、江陵のところも、変更はないと思っていたのだ。やはり、新しいガイドブックがあれば、それにこしたことはない。一方、毎年、買い換える必要もないと思うので、悩むところだ。)

 で、どの系統に乗ればよいかよくわからなかったので、タクシーに乗ると10分かからずに到着。烏竹軒と江陵博物館は同じ敷地にあって、共通チケットだ。烏竹軒は、5000W紙幣の肖像が描かれている、朝鮮時代の儒学者、李珥(イイ)の生家である。博物館は、江原道の文化を紹介するミュージアム。大型バスも何台かきていて、予想よりにぎわっていた。

 続いて、船橋荘(ソンギョンジャン)へ。朝鮮時代の上流階層だった両班(ヤンパン)の屋敷である。ここは烏竹軒から1kmほどなので、歩いて移動した。ソウルにある王宮を思わせるような広い敷地に多くの建物があった。

 次に行ったのが、鏡浦台(キョンポデ)。船橋荘では、タクシーを拾うことができなかったので、20分くらい市内バスを待ち、鏡浦台までやってきた。月見の名所のようだが、昼間にいったので、池と松林がきれいかなと思っただけだ。展望台に5分ほどいたが、ほかには特に見るところがなかった。

 続いて、タクシーで鏡浦(キョンポ)のビーチへ。海岸を見に来る人は多く、この日、まわった観光地の中では一番の人出だった。

 ビーチ近くの食堂で昼食。魚料理をと狙っていたが、たまたま入った店では魚は扱っておらず、プデチゲを注文。ソーセージがたくさん入った鍋物である。この鍋を通して、軍隊の部隊をプデということを知った。軍隊の建物の正門などに、1567プデ、とか書いてあるとプデチゲを連想する。

 このあと、タクシーで国鉄江陵駅へ向かった。正東津(チョンドンジン)まで1区間(次の駅は安仁だがほとんどの列車は通過)だけムグンファ号に乗ることにした。市内バスでもいけるが、系統の変更でどのバスに乗ればよいかわからなかったこともあるが、バスより早いので、当初から国鉄に乗ろうと考えていた。

 乗車したのは、江陵発13時10分の光州行きムグンファ号。わずか1駅であるが、きっちり座席指定になっている。乗車時間は15分だが、列車はこのあと延々と光州まで走る。光州着はなんと22時48分。

 やがて発車。録音テープによる案内に、なんと日本語もあって、びっくりした。正東浦に着く少し前に、海岸側に船が見えた、これから行く統一公園だろう。

 正東浦駅は、海岸寄りのホームが砂浜にあるような駅だ。しかし、海岸とホームの間には柵があって、駅の内外は厳然と区分けされている。この駅も、ドラマの撮影地のために人気がある。

 正東津のホームから南方を望むと、丘の上に船が見える。歩いて20分ほどにある彫刻公園にある建物のようだが、時間がないのでそちらには行かない。

 駅を出た後、市内バス乗り場から、先ほど見えた安保公園に向かう。ここには南侵潜水艦が展示されている。市内バスとはいっても本数が少なく20分ほど待つ。列車ならトンネルでわずかの距離だが、バスは峠越えをして、10分あまりで統一公園着。

 この北朝鮮の潜水艦は南に侵入しようとして座礁し発見されたもので、事件現場の海岸に展示されて統一公園と名づけられている。この公園の住所だが、江陵市安仁津里テポ洞と、偶然の一致だろうが、いわくありげである。

 潜水艦の内部も見学できるようになっている。機械室などのスペースがかなりあり、人が動ける範囲はそんなに広くない。

 安保公園には、潜水艦のほかに、韓国軍の退役した艦船も展示されていて、内部を見学できた。ここでは、50分後に次のバスがくることがわかっていたので、安心して見学した。

 市内バスで江陵まで30分。降りる場所がよくわからなかったので、市内に入って大きな川を渡ったら降りようと、ガイドブックの地図と景色を見て注意していた。その停留所にきたら、ほとんどの客が そこで下車した。このすぐ近くに中央市場があるのである。

 中央市場にいってみたが、予想よりもさびしい感じ。この日は日曜日だったのだが、日曜日には閉店という店も多いようである。

 このあとバスターミナルまで2kmほど歩き、17時前のバスで束草に戻った。帰りのバスの中でも、居眠りを続け、18時過ぎに束草着。

 束草で夕食には、刺身をやっている食堂の並んでいるところまで行った。連日の刺身も考えたが、別のものにしようと、この日は、フェッチプパブ(刺身飯)にした。刺身にご飯をまぜて、とうがらしペーストをつけて食べるのだが、やはり、しょうゆをつけて刺身だけを食べるのにはかなわない。とはいえ、日本では味わえない食べ方ができたんでよかったとは思っている。

 このあと、旅館に戻り、シャワーを浴びて、翌日の計画を考えたりしているうちに寝入ったようである。

 

 2日目へ   束草・江陵のトップへ   ユーラシア紀行のトップへ   4日目へ