4日目  花 津 浦 そ し て ソ ウ ル

 

 束草で3回目の朝。旅館の部屋でパンを食べながら、本日の作戦を練る。金日成の別荘のある花津浦(ファンジンポ)最寄のバス停は、束草から1時間10分ほどかかる。逆に、市内バスの終点から10分ほどだから、 一昨日に訪問しておけば良かったのだが、一昨日の時点では行きたいとまでは思っていなかったからやむを得ない。開館時間は9時からだろうし、バス停からは徒歩で30分くらいはかかるだろうから、7時30分に旅館を出ることにした。

 旅館の人はまだ寝ているのか、人の気配がないので、部屋のキーを受付のようなところに置いて出た。市内バス乗場でしばらく待ち、やってきたバスは満員。ファンジンポ!と叫んで乗車。バス停の名前ではないが、運転手は理解したようで、金額を言っている。いくらかよくわからないが、3500Wを料金箱に入れると、お釣りが少しあった。荷物を全部かついで、しばらく立っていたが、20分ほどで学生の大半が下車してすいたので着席できた。

 目的地が近づくとバスはガラガラになってきた。運転手にもう一度、ファンジンポ!と伝える。まだ先とか、いっているのだろうか。やがて、花津浦の入口らしきバス停に着いたので、運転手に確かめてから下車。バス停そばの標識によると、金日成の別荘までは1.7kmあるようだ。すでに時間は9時少し前なので、着くのは9時20分ぐらいか。少し歩くと、水族館と湾が見えてきた。

 一箇所で海とつながっているが、湖のようにおだやかな湾である。この湾の入口にある橋を渡って、対岸に入り、さらに歩く。車がたまに通るが、歩いている人はほかにはいない。しばらく歩いて、金日成の別荘に到着した。

 ところが、残念ながら、金日成の別荘は工事中だった。古い外壁を利用して、内部は新しくするような工事のようである。もちろん中を見学することはできないが、工事中の様子を見られることは、もうないわけだから、珍しい光景を見ることができたと思っておくことにする。案内の看板には、金正日が子供のときに、この建物の前にある階段に座っている写真もあった。

 金日成の別荘のそばの海岸は、「秋の童話」の撮影地だったようで、看板がたっていた。ここは、不便な場所であるためか、自分がいったときには訪問者は少なかった。また、ここの海岸は、この地域にしては珍しく鉄条網が張られていなかった。

 金日成の別荘から10分ほど歩いたところには韓国初代大統領、李承晩(イスンマン)の別荘があった。ここは、金日成の別荘とは離れているが、あわせて歴史安保展示館となっていて、チケットも共通であった。李承晩の別荘も、数年前に改装工事が行なわれていたようで、内部には彼の遺品などが展示されていた。

 李承晩の別荘からは、金日成の別荘が見え、南北分断当時の関係者の別荘がすぐ近くにあったことに興味をもった。また、こうした別荘があることは、花津浦が休養地として優れていることの現れであろうが、停戦ラインに近いということがあって、観光開発はおこなわれてこなかったようであり、その結果、静かな雰囲気が残されている。

 再び、バス停まで歩いて戻り、バスを待つ。今度は束草まで戻らず、途中の杆城(カンソン)で下車。そこから、市外バスでソウルに向かうことにした。次のバスまで、しばらく時間があったので、その間にバス停の前の食堂で昼食。実は、すぐ出発するバスもあったのだが、そのバスは、ソウルでも上鳳(サンポン)行きで、何となく途中たくさん止まり、時間もかかりそうに思え、一台遅らせて、東ソウル(トンソウル)行きにしたのだ。

 ここでは、キムチチゲを食べたのだが、おかずに、鯖の煮付け(画像では左端)があったのが特徴であった。日本で食べる鯖の煮付けと変わらない味であった。

 12時過ぎに杆城を発車したバスはガラガラだったのだが、50分ほど乗ったところの山間部の町からたくさんの客が乗ってきて、ほぼ満席になった。さらに発車後、1時間30分ほどたったところで、10分ほどドライブインで休憩。ここで、キンパプを買ってバスの中で食べた。

 途中、どのようなルートなのか楽しみだったが、春川(チュンチョン)の15kmほど南の洪川(ホンチョン)を通るルートであった。春川を通る場合に比べて、距離は長そうだが、道路事情はよさそうである。途中、停車したのは、ドライブインを除き3回で最後が洪川だった。

 東ソウルバスターミナルに着いたのは、15時40分、3時間30分のバス旅であった。ソウルでは、高速ターミナル、南部ターミナルは利用したことがあるが、東ソウルははじめてである。高速や南部のターミナルに比べて、東ソウルは下町ぽい雰囲気のところである。

 東ソウルバスターミナルに隣接して、地下鉄2号線の江邊(カンビョン)駅がある。雨が降っていたのだが、いったん、道路を渡らなければならず、ちょっと移動が面倒だった。ここから、乙支路4街(ウルチロサガ)まで行き、5号線に乗り換えて1駅、鐘路3街(チョンノサムガ)で下車。2号線から5号線に乗り換えるには、ほかに2駅、可能な駅があったのだが、どの駅が乗り換えやすいとかわからないので、適当に乗換駅を選んだ。

 鐘路3街で下車後、すぐに、仁寺洞(インサドン)に向かった。前年も泊まった旅館、迎賓荘(ヨンビンジャン)で泊まるからだ。どこに泊まっても良いのだが、一度とまったところは、勝手がわかっていて安心できる。昨年はオンドル部屋にしたのだが、今回はベッドにした。3万Wはらって、すぐに部屋に入り、しばし休憩。バスを降りてから、ここまで50分かかった。

 いったん、休むとなかなか外出できないものだ。結局、荷物を置いたらすぐに出発しようって思っていたのに、1時間ほど休んでしまった。17時30分ごろ外出。

 まずは、夕食。鐘路の繁華街を歩き、何を食べるか迷う。結局、この日はカルビを食べることにした。人が入っていそうなカルビ店を探して入店。カルビの場合は、1人でも2人前から注文を受け付ける場合がほとんどである。入店した店もそうであったが、自分の場合は1人前では量が少ないので問題ない。

 1時間ほどかけて、少しづつ肉を焼いて、ゆっくりと食事。2人前で、おかずもたくさん食べると、満腹感を味わえた。このあと、夜の繁華街を歩いてPCパンを探し、ネットを楽しんだ。残念ながら、日本語で書くことはできなかった。また、PCパンは、ゲームセンターと化していて、ほとんどの客はゲームにこうじているようだった。だから、外国人がネットをやることにはあまり配慮していないのであろう。また、かなり暗くて、ネットをやるには手元が暗すぎるように思えた。

 ネットをやったあと、再び夜の繁華街を歩き、旅館に戻る。その途中で、コンククスを食べる。冷麺の一種であるが、豆乳に麺が浮かんでいて、辛くないのが特徴である。

 旅館に帰る途中、仁寺洞を歩いたが、店のほとんどが閉店し、歩く人も少なくなっていた。旅館に戻ると、シャワーのあと、すぐに寝てしまった。

 

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