11  チワワ太平洋鉄道

 

遅れに遅れたノロノロ列車の1日

早朝5時にタクシーが迎えにくるのだが、4時には目覚めていた。すでに、いつでも出かけることができるように荷物の整理もできているので、もう少し眠ってもよかったのだが、眠ることができなかった。なにしろ、冷房がききすぎて寒いときたら、、、実は冷房を止めることができなかったのだ。 リモコンで操作するタイプのエアコンなのにリモコンがない。本体では操作できない。これでわかった。前日、部屋に入ったときに涼しかったのも、冷房を切るのが簡単にはいかず、面倒だったからだろう。

5時前に玄関へ行くと、頼んでいたタクシーが待っていた。街燈があまりなく真っ暗な中を駅に向かう。市街地をすぐに抜け、建物のない寂しい道を20分ばかり走って、駅に到着した。 駅は町の中心からはかなり離れているようで、駅のまわりには人家などは少ない。

出発は6時なので、待合室でしばらく待つ。ところが、出発時間が近づいても客は少ない。6時ごろから、次第に客が集まってきた。 出発時間がすぎてから客がどうして集まるんだ、、しかし、なかなか列車には乗せてくれない。そればかりか、当日発売の切符売場にも係員が現れず、切符の販売も行なわれない。切符販売が始まったのは6時30分ごろ。列車に乗れたのは6時45分ごろ。指定された席に荷物を置いて、列車を撮影したが、あたりはまだ真っ暗で、うまく撮れなかった。

チワワ太平洋鉄道は、ロスモチスとチワワの間を、オール1等の急行とオール2等の各駅停車が各1往復、毎日運転されている。 急行っても、実際には超ノロノロ運転なので、単に小駅のいくつかに停まらないというだけである。だから、実質は、車両が1等か2等かという違いと考えてよい。ガイドブックによると、ロスモチス発チワワ行きは、1等が6時発、2等が7時発、この日、泊まる予定のクリール発(到着時刻がはっきりわからないので)は1等が14時04分、2等が15時32分となっている。

前日、チケットを購入する際、1等にするか2等にするか迷ったのだが、クリールでホテルに早く着きたいので1等にした。乗車時点では気づかなかったのだが、ガイドブックに書かれているような時刻では運転されていなかったのだ。あとで、時刻を書くが、クリール着は、これよりずっと遅い時刻だったのだ。よって、1等にしてよかった。ただし運賃は1等は2等のほぼ2倍だ。下の画像は、乗車した1等の車両。

実際に発車したのは7時。客の集まりが遅かったのは、7時発という ことを知っていたからだろうか。それにしてもチケットには6時発と書いてあるが、、、ここからは推測であるが、鉄道ではサマータイムが採用されていないのかも知れない。7時ということは、サマータイムがなければ6時だから。ほとんどの客は、そのことを知っていたか、あるいは7時発ということを告げられていたのだと思う。自分の場合は、チケットを買った旅行社で、6時発と間違って記載されてしまったか、あるいは、6時発と書いた上で実は7時だと教えなければならないのに教えてもらえなかったのだろう。

で、出発したものの、超低速のノロノロ運転である。行っても行っても、ずっと低速運転。いったいどういうわけなのだろうか。下 の画像は車内風景。1等というにはやや貧弱な感じがする。

日の出は出発後1時間ほどしてからだった。さらに1時間ほどして、ようやく食堂車の営業が開始されたので、食堂車へ。メニューには書いてあってもつくれない料理もあって、結局、オムレツを注文。トルティージャがつき、コーヒーは別料金だが飲み放題。

食堂車は明るくて気持ちよかったので、コーヒーを飲みながら長居した。 食堂車にいる間に、1つ目の駅、エルフルエテに到着。ガイドブックでは、この駅まで1時間26分かかることになっているのだが、実際には2時間49分かかった。しかも、まだ82kmしか走っていない。ここまで時速は約30km。

この駅をすぎてから、ようやく列車のスピードが少しあがった。平坦地をすぎ、勾配がでてきたあたりからスピードがあがったのは、どうしてだろうか。時速40kmぐらい出るようにはなった。だが、後で出てくる、長時間停車の駅などがあたったため、結局、乗車区間を通してでは、やはり平均時速は30kmくらいだった計算だ。

食堂車から座席に戻ったあと、しばしばデッキに行って撮影したり、眠ったりしながら、時間がゆったりと過ぎるのを待った。 山間部に入って、車窓は変化が多くなってきて、楽しい。変わった形の山であるとか、渓谷が見られるようになった。短いトンネルも結構な数ある。しかし、人家はほとんど見ることはない。

時間が遅れ気味だったので、英語OKという車掌に聞いていると、クリール着は17時の予定だという。それで、ガイドブックの時刻表を見せてみた。何と、この時刻表は間違いだという。毎日、状況によって運行時刻が違っていて、この日は17時30分着とのこと。で、この日だけ違うのかと聞くと、通常は16時30分だが、この日は17時30分だという。なぜ、ガイドブックよりかなり遅くなっているのかは不明であった。(実際にはクリール着は何と19時25分)

鉄橋は大きいのが2箇所あることが、車内の案内図からわかった。下2つの画像は、その鉄橋付近で撮影。上のほうはかなり高い鉄橋であったし、下のほうはS字型のルート上にあり、かなりの勾配があり、あまり時間のたたないうちに高度をかせいでいた。 走っているすぐ下のほうに、いま通ってきた線路が見える。

サンラファエル駅で、反対側からやってくる1等列車とすれ違う。本来なら次のディビサデロ駅ですれ違うはずだが、遅れているためこの駅でのすれ違いになったようだ。この駅に入ったのが15時25分ごろで、反対方向の列車をやり過ごして、発車したのが16時15分ごろ。 しかも、本来は待ち合わせのない駅で停まったみたいで、停まっていた線路から、いったんスイッチバックで後戻りして、再度、本線に戻るという形で出発したのだが、駅を離れたのは16時45分だった。長く停まったので、車掌が言っていた時刻よりもまだかなり遅くなってしまった。

この駅では、先住民が土産物を売りにたくさん集まっていた。窓が開かないので、売り子も買い物をする客も大変だ。デッキは窓にガラスが入っていないので、買い物はデッキで はできるのだ。

ディビサデロ駅では、2等列車とすれ違いになった。ここで列車は15分間停車。駅の構内では露店がたくさんでていているのだが、買い物は後回しにして、露店の間を抜け、駅から50mほど離れている展望台に急いだ。 カッパーキャニオン(銅渓谷)の深い谷を見ることができるのだ。 何でも深さが1000m以上もあるとのことであるが、15分間ではゆっくりと眺めることもできない。

そのあとで、露店でタコスなどを買って食べたのだが、やがて出発時間になってきたので列車に戻る。2本の列車の乗客でごった返していた露店の一時的な賑わいが消えた。15分で、展望を楽しみ、露店で食事というのは少々難しい。

列車に入ると、手にタコスを持っていたので、デッキで食べるように車掌に注意された。この列車、車内では飲食禁止なのだ。そして、車内美化には熱心で、頻繁に掃除に回ってくるし、車内で菓子を食べている客があれば注意している。 従って、車内は清潔に保たれていて気持ちがいい。(食堂車が連結されていない2等列車の場合は、車内での飲食が許されているらしい。)

ディビサデロ駅の次の駅が目的地のクリールだが、この区間も2時間近くを要し、到着したのは19時25分。乗客のほとんどは、この駅で下車したようだ。355kmの区間を12時間25分かかって旅してきたのだ。ノロノロ運転であったが、風景は満喫できた。

駅には、発車予定時刻が、毎日、黒板に書き込まれるようになっていて、あとでやってくる2等列車のほうは、何と21時発だった。ああ、2等列車にしなくてよかった。2等にしていれば、真っ暗になってからの到着で、ホテルの食事にも間に合わず困っていたことだろう。

前日に予約していたホテル、マルガリータのバスが停まっていたので乗車。すぐにホテルに到着した。ホテルのドアを入るとレストランになっていて、みなさん食事中だった。レストランの中にレセプションがあるのだが、一挙にたくさんの客が到着して行列ができたので、食事中の客は落ちつかなかったことだろう。

このホテルは、朝食夕食つきになっていて2泊分のバウチャーを買ってある。この日は、列車の到着がかなり遅れたようで、すでに20時前。部屋に向かう途中に中庭を通るが、もう日は落ちて暗くなっている。暗いうちから出発して、一日中列車に乗り、 部屋に着いたらもう暗くなっていたという一日だった。

夕食は21時までにすませてほしいとのことなので、部屋に入るとすぐにシャワーを浴びて、レストランに急いだ。食事は全員が共通のメニューなのだが、やや量が少ない感じで物足らなかった。

食事のあと、駅のほうに出かけてみた。途中にネットカフェがあったので、しばらく楽しんだ。山奥の小さな村であるが、観光客が多いためにぎわっていた。幸い日本語を読むことができてよかった。 日本語で書くというほうは、もうメキシコ中、どこもほとんど無理だということがわかっていたので、できなくって当然と思えた。

高度(m) 距離(km) 駅名 到着時刻 発車時刻 ガイドブック記載発車時刻
200 0 ロスモチス   7:00 6:00
250 82 エルフエルテ 9:49 9:51 7:26
1400 213 テモリス 13:20 13:21 10:06
1850 252 バウイチボ 14:26 14:29 11:07
2350 285 サンラファエル 15:25 16:16 12:05
2400 295 ポサダ・バランカス 17:07 17:08 12:19
2500 299 ディビサデロ 17:15 17:34 12:45
2450 355 クリール 19:25   14:04
2200 520 クアウテモック      
1600 653 チワワ      

※サンラファエルの駅構内から出たのは16:45

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