1日目  はじめての釜山

 

 約1年ぶりの訪韓である。実は6月に訪韓の予定をたてていたのだが、帰国日に台風が日本に上陸する模様であったので、3ヶ月延期し、9月の訪韓になり、結果的に約1年ぶりとなった。

 今回は、はじめて海路で韓国入りした。フェリーもあるのだが、短期間の日程であるため、時間を有効に使おうと、博多から釜山へ、JR九州が運航しているビートルを利用することにした。ビートルは、1日に3、4往復しており、近年は年間の利用者数が30万人に達するという。

 博多発8時30分の便に乗船するのだが、JR九州のサイトには、その45分前までに乗船手続をするようにとの案内がある。そのため、前日は博多駅前のビジネスホテルに宿泊した。6時30分にホテルを出て、駅前のラーメン店で朝食。ビートルの出港する中央埠頭行きのバス停に行ったが、始発は7時15分のためしばらく待たされる。ビートルに乗るような感じの客は、5人ほどしかいない。

 やがてバスがやってきて、中央埠頭についたのは7時35分。埠頭っていっても、目の前には海は見えないので、イマイチ実感がわかない。中に入ると、多くの客がチェックインカウンターに列をなしていて、乗船手続ができたのは8時をまわっていた。チェックインといっても、荷物の検査などはない。出国手続はパスポートを出すだけで、乗船券が不要なのが空港の場合と違う。出国スタンプは、HAKATA。しばらく待合室で待ったあと8時20分ごろから乗船。ここでも荷物の検査がなく、いたって簡単な出国である。

 2時間55分の予定時間通りの運航だった。常に時速78、79キロの速度を出しているが、ゆれがほとんどない。途中1時間40分ほど経過したところで対馬の近くを通る。日本より韓国のほうが近い離島である。2時間40分ほどで、釜山港内に入る。港の入口から埠頭までかなりの「距離があるようで、先ほどまでとうって変わってゆっくりと進む。そして定刻の11時35分に釜山到着。

 長い通路を歩かされ、入国検査場に到着。入国手続のあと、この日初めての荷物検査。税関では申告書を手渡すだけで、すぐに両替窓口へ。昨年と同じで、1000W(以下ウォンをWと書きます)が100円という感じでわかりやすい。今回は5日間なので4万円両替する。前回の旅で残ったウォンもあるんで、少し余るであろう。ターミナルビルを出ると12時を過ぎている。近くの地下鉄駅である中央洞まで歩く。

 この日は、夜行バスで束草(ソクチョ)に向かうんで、念のためにいったんバスターミナルへ行って、チケットを確保しておくことにした。釜山のバスターミナルは、地下鉄の終点、老圃洞(ノポドン)にあるのだが、終点までは20kmくらいあり、乗車時間も40分ほどかかった。結果的には、乗車時にチケットを買うので十分だったんで、1時間半ほど無駄だったといえば無駄だったのだが、乗る前にはわからないことでやむを得ない。

 地下鉄やバスに共通のプリペイドカードとして、釜山ではハナロカードが使われている。金額不明なので、1万Wだしたら、韓国語で何か言われて、デポジット2000Wと8000W分使えるようにしてカードが出てきた。8000W分ですか、と聞かれたのだろう。今回は半分くらいしか使わないだろうし、残りは今度、釜山にきたときに使うことにする。

 バスターミナルは、老圃洞(ノポドン)駅を下りると隣接してあった。韓国の長距離バスのターミナルは、高速バスと市外バスのターミナルが別々のことが多いが、このターミナルからは両方のバスがでている。ただし、チケット売場は、高速と市外に分かれていて、高速のほうはアルファベット表示があるが、市外のほうはハングルだけの表示である。束草までの夜行バスは、37200W。束草行きの夜行バスは4便あるが、22時40分発のバスにした。下の画像の黒い案内板の部分が高速バス、白い部分が市外バスのチケット売場。

 チケットを確保し、荷物をコインロッカーに入れたあと、市内に戻る。南浦洞(ナンポドン)に着いたのは14時ごろ。ここから、実質的に釜山めぐりのスタートである。この時間からではいけるところは限られているので、今回は南浦洞の近辺を中心とし、ほかは別の機会にまわることにする。

 まずは、昼食がまだなので腹ごしらえ。駅からほど近い済州家であわび粥を食べた。あわびスライス3切れはいって、塩味ほどほどの味付けで気に入った。

 食後は、龍頭山公園へ。ちょっとした丘になっているが、便利なことに、麓からほとんど頂上の近くまで、4台のエスカレータを乗りついで上れるようになっている。公園内はお年寄りの集まる場のようになっている。

 公園の中心にそびえるのが、釜山タワー。タワーから市内を眺めると、釜山が大都市であることや、山と海にはさまれた低地に町がひろがっていることがよくわかる。四方の眺望を楽しんでいたら、すぐに時間がたていった。画像は北側の眺めである。

 このあと、龍頭山公園の北側にある釜山近代歴史館へ向かった。比較的新しくできたミュージアムであるが、建物自体は、日本統治時代に東洋拓殖株式会社釜山支店であった建物である。東洋拓殖株式会社とは、パンフレットによると「日帝が朝鮮経済を支配することを目的」としてつくられた国策会社である。

 このミュージアムの展示を通じて強く主張されているのは、日本が朝鮮を支配する間に人と物を奪ったということである。パンフレットにはこう書いてある。「農業、工業、水産業、金融等、すべての産業分野で日帝の収奪が行われた。日帝支配の末期には戦争に必要な物資と人力収奪をほしいままにした。」 展示の日本語の解説でも「日帝」「収奪」という語が頻繁に使われているのが印象的である。

 次に国際市場を見た。細長い2階建ての建物を中心に、細長く続いている市場である。訪問前には、外国商品を多く取り扱っているのだろうかとか、外国人の店舗が多いのだろうかとか考えていた。実際には、そういうことはなくて、ほかの市場と変わりがない。唯一、国際をイメージさせるのが、外国人の客がやや多いことと、あたり周辺に張りめぐらされた万国旗である。

 すでに17時を過ぎ、元山麺屋でビビンネミョンを食べる。冷麺といえば、今までムルネミョンを食べていたので、ビビンネミョンは初めて。唐辛子味噌で麺をあえて食べるので、汁が少ない。お決まりの通り、麺が運ばれてくると、店員が麺を切って食べやすくしてくれた。

 南浦洞の付近は、釜山でも最大の繁華街であるが、近年は、西面に中心が移りつつあるらしい。それでも、17時半ごろになると、路地ではたくさんの人々で歩きづらくなっているところもあった。

 このエリアでは最後にチャガルチ市場に行ってみた。海に面したところにある魚市場である。ここの1階で魚を買い、2階で料理にしてもらうというのが、お決まりコースのようであるが、なかにはぼったくりのような店もあるらしい。今回は、翌日に束草に行くので、そこで安く魚が食べられるはずなので、チャガルチ市場は見て回るのにとどめた。

 18時をまわると、あたりも暗くなってきた。このあと、地下鉄で西面まで行き、ここの繁華街を見てあるくことにした。ロッテ一番街がそのなかでも中心になっている。冷麺だけではお腹がすぐにすいてしまうので、デジクッパプを食べてみた。豚骨のスープでつくったクッパプである。豚肉がたくさんはいっていた。

 繁華街を一通り歩いた後、PCパンでネットを楽しんだ。下の画像のなかに見えるような店が何軒かあった。しかし、入った店では、日本語は読めるけど、日本語で書くことはできなかった。

 バスは22時40分発なので、21時30分にPCパンを出て、地下鉄駅に向かった。西面から25分でバスターミナルのある老圃洞(ノポドン)に戻った。あらかじめ調べてあったバス乗場に行くと、すでに乗車するバスが止まっていた。

 このバス、座席は片側2列、片側1列で、足置きもついていて、ゆったりするバスであった。定刻に発車したが、定員の半分くらいの乗車率だった。バスは、慶州と浦項で停車し、一部の客が下車し、別の客が乗るといった具合で、浦項をでたときには10人くらいしか乗っていなかった。このあと、睡眠タイムにはいった。

 

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