2日目  束 草 の 周 辺

 

 
 夜行バスは、東海(トンヘ)、江陵(カンヌン)と真っ暗な中で停車。4時半ごろの江陵では半分の客が下車して、束草(ソクチョ)まで行く客は5人ほど。江陵で停車したのはバスターミナルの中ではなかった。で、どこで停まっているのか、窓の外を見てもよくわからない。実は、この翌日、束草から日帰りで江陵にいったんで、そのときにバスターミナルの前で停車していたことが判明したが、真っ暗な中で停車していたときにはまったくわからなかった。初めての町で、夜中に、場所もよくわからないところで下ろされたら、たまらんな、と思った。

 ガイドブックでは江陵から束草の所要時間は1時間半となっているが、深夜はかなりスピードを出すとみえて、5時半すぎに束草に着いた。バスが停まると、そこが市外バスターミナルの前であることがわかった。この日はまず雪岳山(ソラクサン)に上るのだが、ケーブル(韓国ではロープウェーのことをケーブルというようだ。)が8時から運転するとのことで、7時前まで1時間あまりバスターミナルですごすことにした。

 小さな待合室で昨日買っておいたパンを食べたり、バスの時間や運賃の案内を見たりしているうちに、明るくなってきた。残念なことに、このバスターミナルにはコインロッカーや荷物預り所がないのである。雪岳山にはできるだけ身軽になって行きたかったのだが、やむを得ず、荷物を全部、かついで歩くことにした。もっとも、もともとそんなに多い荷物じゃないからできたことだ。すぐ旅館に入ることも考えたが、閉まっているところが多いだろうし、早朝着でも1日分の料金をとられるかもしれないので、雪岳山には全部の荷物を持っていったのだ。

 

 

 7時前から、バスターミナル前の市内バス停で雪岳山行きのバス(7番)を待った。この日は曇っていて、せっかく山頂に上っても、どれだけの眺望が得られるかわからなかったが、早朝から行動して、朝一番のケーブルに乗るため、この日に行くことにした。

 雪岳山までは20kmくらいあるのだが、なぜか市内均一料金で乗車でき、わずか750Wであった。川沿いにバスが上流に向かって進むにつれ、雨が降り出してきた。7時40分ごろに、雪岳山の終点に到着したが、傘なしでは歩けない状態だった。終点のバス停からケーブル乗場へは15分くらいかかる。途中、入山チケットを買うところ、そのチケットを見せるところがあるのだが、チケットを見せるところで荷物を預かってくれることがわかったので、そこで荷物を預けて身軽になった。

 さらにしばらく行くと、ケーブル乗場がみえてきて、8時の始発に間にあうなぁと思っていると、ケーブルがあがっていくではないか。5分ほど早く、フライング運転したようだ。ケーブルのチケットを買って、すぐに発車できるとの見通しが崩れ、10分ほど待たされることになった。その間に、幸運にも雨がやんだ。

 

 
 やがて乗車でき、5分ほどで山頂駅に着いた。あたり一面、岩が露出しているような山である。紅葉が美しいらしいが、まだその時期には早い。ケーブルに乗ってきた人たちはみな山頂である権金城(クォンクムソン)に向かうようなので、その人たちのすぐ後ろを歩いていった。権金城へは、15分くらいでいけるが、岩場が多く、雨のあとは滑りやすいので、注意して歩いていった。
 

 
 10分ほどで、ほぼ頂上まで到達できた。さらに5分ほどで、大きな岩のすぐ下まで達した。だが、大きな岩の上に上がるところは滑りやすそうだったので、上がらなかった。この日は、ほかの人も大きな岩の上までは上っていなかった。ここからは、雪岳山の奥のほうや、束草市街のほうがよく見渡せる。(下の画像は、束草方面の眺め。曇っているため見にくいが、左上に束草市街も見える。)
 

 
 10分ほどかけてケーブル乗場へ戻り、9時ごろのケーブルで下山した。そのあと、新教寺(シヌンサ)にいった。境内の入口に、大仏があり、その奥のほうに、寺の建物があった。雪岳山にある寺のなかでは、一番古いのがこの寺である。
 

 
 新教寺を見たあと、茶店兼土産物屋で、朝食に、マッククスを食べた。そば粉でつくた麺で、見た目には薄味のように見えるが、底のほうに辛味噌がはいっていて、混ぜると辛い麺になった。
 

 

 預けていた荷物を受け取り、市内バス乗場に行くと、ちょうどバスが停まっていたのですぐに乗車。まもなく発車し、市内バスターミナルまで戻ると11時をまわっていた。市内ではまた雨が降っていた。ここで、この日の宿探しである。バスターミナルの付近には、ざっと見ただけで数軒の旅館が見つかる。どこを選んでも同じであろうが、選んだのはユゴォンジャンという旅館。

 韓国語はまったくわからないが、出てきた主人らしき人に パン イッソヨ? と声をかけると、オンドルかチムデかと聞いているようで、泊まれるようだ。これまで、この場面では、オンドルかベッドかと聞かれていたので、チムデが寝台のことだとすぐにわかった。で、チムデと答える。オルマエヨ? と聞くと、答えは聞き取れない。で、3万Wを渡すと、ちょっと待つようにというポーズをとられたので、おつりかなと思っていると、5000W返ってきた。25000Wということで、地方は旅館も安いようだ。部屋に案内され、キーを渡される。

 

 

 部屋の中で、しばらく休憩。夜行バスの疲れもあるので、30分ほどチムデで横になる。小さめのリュックに必要なものだけを入れて、出かける。もともと荷物は少なかったが、さらに身軽になった。この日は、統一展望台がどうしても行きたいところだが、安保公園からのシャトルバスが13時、15時で、しかも、安保公園まで1時間20分くらいかかかるようなので、15時のシャトルバスに乗るため、13時20分ごろの市内バスに乗ることにし、それまでに昼食をとることにした。

 昼食は、オジンオスンデに決めていた。ガイドブックに掲載されている店に向かった。海に面したあたりにあるはずだがその店が見当たらない。その付近を行ったり来たりしたが、どうも店がなくなったらしい。昼食時間は限られているし、不審者と思われても困るんで、手当たり次第に、目についた店にはいった。雨も降っていたこともあり、ほかの客もいないかったが、食べることができることがわかり、その店の座敷にあがった。

 オジンオスンデは、いかの中に具をつめて、薄くスライスしたものを揚げたような料理である。出来上がるのに少し時間がかかった。量は、日本にも、いかめしがあるが、いかめしと同じ量である。ただし、おかずがいろいろ出てくるので、量が少ないというわけではない。

 

 
 入店した店から少し歩いたところに、ケッペがあるので行ってみた。束草の陸地本体と砂州とが狭い水路で隔てられている個所があるのだが、ケッペはその両側を結んでいる船である。船といっても、ワイヤーで両側の陸地と船が結ばれていて、そのワイヤーを乗船客が器具を使って引っ張り、船を動かすものである。ケッペに体験乗船してみた。ほかでは、まず見ることができない船だ。ほかにも、韓国人の観光客がやってきていて、観光名所のようになってる。この船も韓国の ドラマ「秋の童話」に登場して有名になったようである。
 

 

 楽しい船なので、結局2往復してした。このあと、バスターミナルに戻るつもりだったが、ケッペの近くからも目的のバスに乗れることがわかったので、こちらのバス停から乗車することにする。乗車するのは大津(デジン)行き(1番)のバスなのだが、なかなかやってこない。

 30分近く待って、13時30分すぎにバスがやってきた。このバスは市内バスであるが、均一区間外のようで3430Wだった。さあ、安保公園発15時のシャトルバスに乗れるか、どうか、このあと1時間半ほど時計を気にすることになった。とくに、途中、幹線道路から離れて町の中の道を遠回りしたり、幹線道路からいったん町の中の袋小路になった道を2kmくらい進んで、そのあと幹線道路に引き返したりするときには、ハラハラさせられた。

 そして、終点の大津に着いたのは、14時53分。ここから北へ10分ほど歩いたところに、統一安保公園があり、そこからシャトルバスが出発しているのだ。あと7分、歩けば10分。もう走るしかない。少し上り道であっが、走ったり、疲れて歩いたり繰り返した。結局、14時59分に統一安保公園に到着。統一展望台に行くためには、ここで手続が必要だ。もう時間がないが、いま窓口にいけば、バスの出発を待ってもらえるかもしれないと思って、窓口に駆け込んだ。(画像は、統一安保公園の手続窓口付近。統一展望台から戻ってから撮影したものである。)

 

 

 窓口に駆け込み、トンイルチョンマンデ、シャトルバス!と叫ぶ。ところが、何か言われ、どういっているのかよくわからない。バスはもういった、今日はバスはない、と言っているのかもしれない。やがて、英語での話しになり、詳細がわかった。バスはない、というのはその通りだったが、間に合わなかったのではなかったのだ。8月17日から、シャトルバスがなくなったというのだ。しかも、タクシーはここには待機していないというのだ。

 さあ、どうするか。統一展望台はあきらめようかとも思ったが、もう、ここまでやってきた以上、引き返したくない。それで、意を決して、次に手続にやってくる客に、便乗を頼むことにした。だが、韓国語は知らない。やむを得ず、英語で頼むことに。しばらくして、 若い男女2人の客がやってきた。便乗させてもらうとなると、家族連れでは乗れるだけの余裕はないかもしれないから、こうした客のほうが都合がよい。客の手続が終わったところで、男性に話しかけてみた。男性は女性に聞いたうえでOKだと言ってくれた。

 これで行けることになったので、自分の手続をしなけらばならない。それで、手続の間、しばらく待ってくれるように男性に頼むと、一緒に行くから手続は彼らの走゙i椋前を書くだけでよく、チケットだけを買えばよいとのことだった。それで、彼らの書類に名前を書き、チケットを買った。窓口の係りも喜んでくれた。ここまで10分かかっていない。15時10分に車に 便乗し、統一展望台に向けて出発。

 途中、検問所があり、彼らはそこで自分の名前も書いた書類を兵士に渡し、代わりに許可書を受け取って、車の前からわかるように置いた。さらにしばらく走り、統一展望台に到着。16時に、車に戻るということで、2人とは分かれて行動する。

 

 
 駐車場から長い階段を上ったところに展望台があった。1階は北朝鮮などについての展示、2階は座って説明を受ける部屋になっている。こうした点は、以前訪問したほかの展望台と同じである。北朝鮮の眺望は、上の画像では2階の右側に張り出ている部分から望む。海金剛や金剛山が眺められた。(画像で、右上に見えるのが海金剛。)
 

 
 16時過ぎに統一展望台をあとにし、統一安保公園まで戻ってきた。タクシー代に相当するお金を御礼として手渡そうとするが、固辞されてしまった。本来なら、統一安保公園でビデオを見て、そのあとで統一展望台へいくことになているらしいので、一応、それも見ておこうかなと思ったが、場所などがよくわからなかった。それで、大津のバス停に戻った。(画像は、大津のバス停。)
 

 
 大津では、しばらく待って、バスが発車した。1時間20分かかって、束草のバスターミナルまで戻った。束草に着いたのは18時前で、もう薄暗くなっていた。このあと、夕食に刺身を食べに行くのだが、その前に、燈台展望台に行ってみた。青草湖を取り囲むように束草の町がひろがっていることがよくわかった。
 

 
 このあと、燈台展望台の下にたくさんある刺身専門店に入る。3万Wということだったが、2万Wでやってほしいと頼んだらOKであった。まず最初におかずが出てくる。ここは、ゆっくりしたペースで食べた。
 

 
 次に刺身が出てくる。2万Wの場合は、小さな魚を調理しているようであったが、それで十分であった。魚の種類は、ひらめ、ぶりの一種、いかであった。(いかは、画像では左下の別皿。)
 

 
 最後に、魚のあらを入れた鍋物がでてきた。とても美味しく、ほとんど食べきった。このあと、夜の町を歩いて、PCパンを訪ねたが、日本語は使えないという店ばかりで、あきらめて旅館にもどった。
 

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