6  ル ク ソ ー ル へ

 

バスに乗り遅れ、ローカル列車でルクソールへ

 

この日はアスワンからルクソールに向かう。どういう手段で行くか迷った。車をチャーターして、コムオンボ、エドフのホルス神殿に立ち寄ってルクソールに向かうことも考えた。今にして思えば、多少、値段がかさんでも、車にしておけばと悔やんでいる。

前日、ヌビアンオアシスホテルで車のチャーターの件を相談すると、1人だと200LEだが、ほかに2人組が明日、同じコースを旅するかもしれないので、その場合は1人70LEという。それで、2人組が行くなら同行することにした。ところが、夜になって、ホテルの従業員から2人組は一日遅れて同じコースを行くことになったらしいと聞かされる。1人では高すぎると躊躇していたら、最終的に150LE(約2700円)まで下がった。ここで、話に乗っておけばよかったのに、突っぱねていた勢いで断ってしまった。

結局、路線バスで行くことにした。ガイドブックによるとバスの本数は結構多いようだ。1時間ごとにバスがあるらしい。これを信じたのがまずかった。8時ごろのバスに乗ろうと、7時にホテルを出発。レセプションの前の床で従業員が寝ていたので、鍵を渡して、バスターミナルへ。列車は、ガイドブックでは、6時、18時、20時となっていたので避けたのだ。

ガイドブックの地図の縮尺が間違っていることは、一昨日にわかっており、バスターミナルまで3kmくらいありそうで、8時ごろのバスに乗るなら7時にでればいいだろう。バスの時刻はなるべく前日のうちにバスターミナルに行って調べるようにしているが、アスワンのバスターミナルはホテルから3kmも離れているようなので、下調べはあきらめ、一か八か行き当たりばったりでバスターミナルに向かった。

ナイル川を左手に見ながら、すがすがしい空気を吸いながらバスターミナルに向かった。7時40分ごろには到着するはずだったが、どうもおかしい。どうも、ガイドブックに描かれているターミナルが移転して、元のターミナルは更地にする工事が行なわれているようだ。では、新しいターミナルは、というと、はるか1kmほど先で大型バスが、出入しているのが見えたので、そこが新しいターミナルなのだろう。しかし、まだ10分あまりかかるだろう。

ようやく、バスターミナルに到着。大型バスが止まっている。ああ、ルクソール行きだな、と思って切符売場で張り切って、ルクソールと叫んだ。ところが、信じられない言葉がかえってきたのだ。

ルクソール行きは出たところだという。7時45分だったという。うぅっ、5分前だ。そういえば、そのバスも見ていた。まあ、次のバスにすればいいやと思ったのだが、そうは問屋がおろさなかった。次のバスは何と15時というじゃないか。ガイドブックには1時間ごとと書いてあってので、何かの間違いかなと3度尋ねたが、同じだ。全くバスがないのか、バスがあっても15時までのには外国人を乗せないのか、わからないがどうしようもない。

途方にくれていたら、9時30分に列車があると、切符売場の人が教えてくれた。ガイドブックにはのっていなかったので、意外だった。すぐに駅へ歩き出したのはいうまでもない。

ホテルから50分かかって、バスターミナルまで歩いてきたから、9時30分の列車には歩いて十分に間に合う。バスターミナルには5分滞在しただけで、来た道を戻っていった。バスターミナルは街の中心から4kmほど離れた郊外にある。道を行きかう車は多いが、歩いている人は少ない。

途中で、車に乗れと誘われたが、あとで法外な金額を要求されるかもしれないし、歩いても時間があるので歩き続けた。さらに、パトカーに先導されたバスやタクシーの車列とすれ違った。ルクソール行きのコンボイだ。ああ、昨夜、意地を張らずに、タクシーにしておけば、自分もこの車列の中にいたはずなんだが、、

8時40分、アスワンの国鉄駅に到着。ふぅ〜。ホテルから500m、10分かからずにいけるところを、7500m、1時間40分かけて歩いたことになる。

切符売場でルクソールまでの切符を買おうとしたが、車内で買うように言われる。ホームに出ると、 すでに列車が停車中。車両がほこりっぽく、砂漠の中を走ってるって感じ。

車内は始発駅にもかかわらずゴミが散乱し、きれいな席を求めて列車内を探す。乗車したときには、ガラガラだったが、発車が近づくにつれて、次第に混んできた。

やがて出発。自分のボックスだけは客がこない。外国人だということで敬遠されているのだろうか。しばらくして、切符を売りに来たので購入。アスワンからルクソールは約220kmであるが、運賃は6LE(108円)だった。ガイドブックにはずっと高い運賃が書いてあったので、これは3等のローカル列車の運賃なんだろう。たぶん、この区間の最低の運賃だろう。200kmを100円で乗れるということがうれしくなり、バスに乗り遅れた悔しさも忘れ去った。手書きの補充券には何と書いてあるのだろう。

やがて同じポックスに客が乗ってきた。今までに回ったところや、これからの予定を聞かれ話した。この列車には外国人はあまり乗らないということだ。 日本は素晴らしい、とこの客はしきりにいっていた。何が素晴らしいのかと聞くと、日本人が素晴らしい、日本製品も素晴らしいということだ。この客に関して言えば、日本の印象はとてもよいようだ。

エドフで相客が下車し、代わりに欧米人が乗ってきた。ホルス神殿に行ったということだが、外国人が自由に旅行できないはずだったので、ポリスが付き添っていたのか聞いてみた。自分たちだけで車に乗って遺跡へ行ってきたということだ。ガイドブックでは、ポリスの付き添いが必要なことが書かれているのだが、この制度も次第に形式化してきているのかもしれない。

4時間かかり13時30分にルクソール着。ガイドブックでは3時間になっているから、やはりローカル列車で時間がかかるのだろう。4時間も乗って100円とまたまた感激。

目星をつけておいたホルスホテルに向かう。一旦近くまで行きながら、道を間違ったと思い駅まで引き返し、正しかったことを確認して、もう一度同じ道を歩いたりしていたので、ホテルの部屋に入ると14時であった。 ルクソール神殿やスークのすぐそばである。

この日は、ナイル川の東岸にあるルクソール神殿、カルナック神殿、ルクソール博物館を見たいと思っているが、すでに閉鎖時間が迫っていて、ルクソール神殿くらいしかまともに見られない。ただ、ラッキーなことに、毎日やっているカルナック神殿の「音 と光のショー」がこの曜日がたまたま日本語の日だったので、夜に行ってみることにした。

まずは昼食。この日は朝食もまともにとっていない。アスワンを出発する前にホテルの部屋で菓子類などを食べただけだ。その後、バスターミナルへ無駄な往復をして、そのあとは列車の中だったので何も食べていない。

ホテルのすぐ近くのレストランで魚のフライを注文。日本ではフリッターと呼ばれている料理法であった。何の魚かよくわからない。ナイル川の魚なのだろうか。このほかに、スープとパンがついて26LE。

このレストラン、隣り合ってよく似た雰囲気の店が2軒並んでいて、しかも屋根はついているが、1つの屋根の下のオープンスペースにある店なので、外見は1軒の店のように見える。料理が運ばれてくる間に、2軒の別の店が隣り合っていることに気づいた。

食事後、すぐにルクソール神殿へ。すぐそばのレストランにいたというのに、神殿の入口がレストランとは正反対の側にあったので10分くらい歩いて入場。途中、馬車の 集結個所があってたいへんな臭いの中を歩いた。すでに15時。あと1時間で閉鎖だ。

上の画像は、第1塔門。この奥に中庭や列柱廊がある。一番奥まではここから300mくらい歩く。3体立っている像はいづれもラムセス2世。左側の座ったラムセス2世のそばにはオベリスクがそびえている。これは右側にもかつてはあったのだが、フランスに贈られて、今はパリのコンコルド広場に建っている。

奥へ進むと、またもや像がたくさん。これまたラムセス2世。

壁にはエジプトらしい彫り物が残されている。

このあと、国鉄駅に向かい、翌日の夜行列車の切符を購入。ルクソールからカイロまで1等で60LE。カイロの切符購入に手こずったので、身構えていたが、ルクソールでは最初に尋ねた窓口で難なく買えた。なつかしい硬券であった。発車時間、号車、指定席などは裏側に手書きであった。

「音と光のショー」までは少し間があったので、ルクソール博物館に行くことも考えたが、ゆっくりと見る時間もないので、ホテルで1時間ほど休憩。 博物館は翌日、西岸から帰った後、列車に乗るまでの時間を利用することにしよう。

ショーは20時からだが、18時40分にホテルを出発。ホテルから少し離れたところからマイクロバスでカルナック神殿にいけるらしい。確かに次から次へとマイクロバス、というよりはワゴン車がやってきて、客が乗り降りしている。

やってきたワゴン車に、カルナック?と聞くとNo、次の車もNo、次もNo。本当にカルナック神殿に行く車があるのかと思っていたら、5台目やっと乗れとの合図。すでにあたりは真っ暗。カルナック神殿はたいへん大きく、昼間なら近くまでいけば、その一部が見えるに違いないが、残念ながら何も見えない。運賃はというと、後ろの席の客は、前の客にお金を渡し、バケツリレー方式でお金を送ると、お釣りがまた前から順送りで戻ってくるシステムだ。他の客のお金を送ったことで、運賃は25pt(約5円)と判明。自分も前の客に25ptを送った。(100pt=1LE 読み方はピアストル)

どこで降りればよいかわからなかったので、まわりの客に何度となくカルナック?と聞き続けた。10分ほどで、隣の客がここで降りろとの合図。しかし、本当にここ?ってな感じのところであったので、客には申し訳ないが運転手にもカルナック?聞いてから下車。う〜ん、困った。真っ暗な人通りもほとんどないところで、ここからかなり離れているのではないかと思ってしまった。飲食店が数軒並んでいるところにまもなく出た。実は、この飲食店から広場をはさんだ向かいがカクナック神殿だったのだが、暗くて建造物が見えない。

そのため、間違って、飲食店の側の道をカルナック神殿とは正反対の側にどんどん歩いていったのだ。10分くらい歩いて間違ってしまたっと思い、引き返すことにした。引き返す途中で、自宅の前で座っていた人に尋ねるとやはり、逆へ歩いていたことがわかった。飲食店のところまで戻り、広場の反対側を見ると、カルナック神殿のチケット売場らしきものが見えるじゃないか。なあ〜んだってことになり、チケット購入。

まだ、開始まで30分あったが、ほかにすることもなく入口で待つ。次第に客が集まってきた。週に一度の日本語の日とあって、ほぼ全員、日本人。久しぶりに日本に帰ったような気分。聞こえてくる話から、自分以外の人の多くが、ツアーか、ツアーのオプションできているようだ。ごく一部、個人旅行客でタクシーをチャーターしてきた人もいるようだ。

20時、ショーが開始。「音と光のショー」は、ギザのスフィンクス前、アブシンベル、アスワンのイシス神殿でもやっているのだが、カルナック神殿の場合は、他のところと違って、前半は物語の進行に従って、遺跡の中を歩いていくのである。後半は、ほかの場所のショーと同じく観客席に座っての鑑賞となる。

上の画像は、開始直前、第1塔門がライトアップされ、入場を待っているところ。ずっとライトアップしていてくれたら、ワゴン車を降りてから行き方を間違えることはなかっただろう。

歩いて移動しながら30分、座席に座って30分、あわせて1時間ほどのショーだった。

移動しながらのときは心地よく感じていたが、座って見るときには、かなり涼しく、ジャンパー類がないと困る程度の気温だった。

ショー終了後、ワゴン車を降りたところまで歩き、ワゴン車を待った。しばらくして、市内に向かうワゴン車がやってきた。

ホテル近くまで戻り、歩いてホテルへ。ホテルではシャワーのあと、早めに休んだ。

 

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