(17) トラブゾンその1

エルズルムからトラブゾンまでは、距離の割りに時間がかかる。山越えを2回しなくちゃならないから。とはいっても、夜行バスなので、どんなところを通っているのやらわからない。乗車したバスは珍しく、ドライブインでの休憩もなくトラブゾンへ直行。5時30分ごろになると、明るくなってきたが、これまで何日かすごした東トルコとは違って、山に緑が多い。それだけ雨がよく降るということだろう。何回か見た天気予報でも、トルコの中で、トラブゾンだけが雨が続いていた。さいわいこの日は曇ってはいたが、雨ではなくてよかった。

7時ごろにトラブゾンのバスターミナル着。さぁ、困った。トラブゾンの次の行き先の切符を買わなくちゃならない。エフェス、パムッカレまで行ってしまうか、それとも、アンカラ、サフランボルでとどめておくか。思い切って、エーゲ海方面へ大移動することを決心。とても時間がかかることと、もう旅の終盤でトラブルがあると帰国にも支障があるかもしれないことを承知で、やはり、トルコで世界的に著名なエフェスとパムッカレにどうしても行きたい、という気持ちを優先させた。

いくつかのバス会社をあたったが、結局、パムッカレ最寄のデニズリ行きはなく、イズミール乗換えでエフェスへ行かなくちゃならないことと、どのバス会社のバスとも翌日11時から12時にかけての出発ということ。出発時間をもう少し分散させれば、会社にとっても客にとってもいいのにね。結局、トラブゾンよりさらに黒海を東にいったリゼを拠点とするバス会社の切符を購入。

このあと、トラブゾン市街の中心であるメイダン公園にミニバスで向かうのだが、ミニバス乗場がよくわからない。乗場を探しているうちに、ミニバスじゃなく、大型バスの乗場が見つかったので、ここからのバスに乗ることにした。やってきたバスの車掌にメイダン?と尋ねると、行くというので10分ほど乗車。終点らしいところで下車。ところが、メイダン公園からは少し離れているところで、公園まで10分ほど歩かねばならなかった。このときにはじめてトラブゾンが傾斜地にできた町だということを知った。坂道を荷物かついで歩いて、こりゃ大型バスが町の中心へは入れないわ、と実感。

メイダン公園まで出て、その近くのホテル、ヌルへ向かう。ホテル着8時。泊まっている客がでていかないと部屋にはいれないということで、荷物を預け、午後から部屋に入ることになった。部屋代は25MTL(2200円)で、最東部に比べると高め。スメラ僧院への行き方を尋ねると、ホテルでミニバスをあっせんしているというのでAそlミニバスを利用することにした。10MTL(880円)。ミニバスの発車は10時ということで、それまでにトラブゾンの町を見下ろせるボズテペへ行ってくることにした。

 ボズテペからの眺め

メイダン公園の周りにはたくさんのミニバス乗場があって、行き先によって乗る場所が違っている。ボステペ行きはガイドブックに書いてある通りですぐにわかった。ミニバスは客が席の数だけ集まれば発車するというスタイルで運行されており、かなりの頻度で運転されていた。運賃は0.5MTL(44円)。公園自体が傾斜地にあるような町なので、出発するとすぐに坂道にさしかかかる。10分ほど延々と坂道をあがっていく。終点で降りるのかと思っていたが、途中でほかの客が、展望のきく場所を教えてくれたので、そこで下車した。そこは公園になっていて、眼下にはトラブゾンの町が広がっていた。まだまだ時間があるので20分くらい、展望を楽しんだ。

展望台をあとにして、ミニバスを降りたところで帰りのバスを待った。ところがミニバスがなかなかやってこない。ひょっとして、ミニバスは一方通行になっていて、ここからは上に向かうバスに乗るのだろうかと不安になってきた。20分ほどまって、ようやく下行きのミニバスがやってきた。後ろの座席に座ったが、運賃を運転手に渡すにはどうするか。お金を前に座っている人に渡すのだ。そうするとお金が次々と運転手にまで運ばれ、おつりがあるときは、運転手から逆向きにお金が運ばれていき、本人におつりが戻るという仕組みになっている。

メイダン公園まで戻ったが、スメラ僧院行きの出発までまだ時間あるので、メイダン公園の中を歩いてみた。市民のいこいの場になっている公園で、屋外カフェが軒をつらねている。ほかの町と同じく、アタチュルク像がこの公園にも置かれている。

10時前にホテルに戻り、しばらくして、スメラ行きのミニバスが迎えにやってきた。ほかのホテルの客も拾っていき、一路スメラへ。載っていた観光客は自分以外には韓国人2人組がいたほかは、すべて西洋人であった。ミニバスは、途中までこの日の朝、エルズルムからやってきた道を逆に走る。やがて、スメラに通じる道に入り、山の中を走行。1時間ほどでスメラ到着。

 下から見たスメラ僧院

スメラでバスを降りると、頭の上にスメラ僧院が見える。絶壁にへばりつくような建物である。よくぞ、あんなところへ資材を運び込み、工事ができたものだ。なんでも、14世紀にキリスト教徒がイスラム教徒から逃れるようにして、この建物を建てたらしい。それにしても、上まであがるのは大変そうだ。

 壁画の残る洞窟

30分ほど、山道をあがり続けてようやく入口までたどりついた。入場料は5MTL(440円)。内部が全部公開されているのでなく、見られるのは一部だけであった。絶壁に面している窓から眼下をのぞくということはできなかった。この僧院の一番のみどころは、イエスキリストの像などの壁画がきれいに残っている洞窟である。

 洞窟内の壁画

僧院内を見て回って、上ってきた道を引き返す。降りるのも、すべりやすいところがあって注意が必要。下まで降りたところのレストランで昼食。地元の魚、というメニューがあり、どんな魚かなと思って注文する。スープ、コーラを合わせて7MTL(616円)。やってきたのは、マスのグリル。ちょうどいい味付けで美味しく食べることができた。

 地元の魚の正体 

スメラから帰りのバスは14時ごろの発車で、15時ごろにトラブゾンに戻ってきた。ます、自分の部屋へ。すでに荷物を運び入れておいてくれており、シャワーを浴びる。エアコンと冷蔵庫があったが、エアコンは電源が入らず、リモコンもなく使えないようになっているようだった。冷蔵庫は使えたので飲みものを冷やしておく。

 バザール地区

16時前から町歩きに出発。メイダン公園を通ってまずは、バザールへ。バザールといっても、専用の建物があるのではなく、商店が軒を連ねているような一帯である。バザール地区のなかも、起伏があって歩きづらい。狭い路地に客がひしめきあっている。ついで、オルタヒサルへ。昔の城壁のなかの地区である。城壁のあたりは、標高の高い地区が谷をはさんで向かい合っていて、その2つの地区を橋で結んでいた。そして、谷の部分にも市街地が広がっている。トラブソンで一番の繁華街もまた傾斜地にある。ミニバスが頻繁に行き来しており、わずかな距離でも歩かずにミニバスを利用する人が多いように思えた。

 高い場所の町の谷間にも町がある

このあと、ロシアンバザールへ。ロシアから入ってきた商品が多いと思ったが、多くは国産品のようであった。ロシアンバザールは建物の中にある。この町は、ロシアとの往来もさかんなようで、ロシア人向けにロシア語のメニューを掲げたレストランなど、ロシア文字をあちこちでみかけることができた。黒海の岸辺にもいってみた。そして、足先を海水につけてみた。このトルコ旅行で、地中海と黒海の両方の海水に触れることができ満足である。

 イワシのフライ 

メイダン公園のあたりで夕食。魚のフライを揚げている店が目にとまった。美味しそうなのではいってみた。いろいろな魚を揚げているようだったが、イワシのフライを注文。出された皿にはイワシのフライが山盛り。これに、サラダがサービスでついていて、食べ放題のパンも食べると満腹になった。とてもおいしい店だったので、再度トラブゾンを訪問したときには、また立ち寄ってみたいと思う。

飲みものを買ってホテルに戻る。シャワーを浴びて、すぐに眠りについた。