(20)パムッカレ

宿での朝食のあと、9時20分にパムッカレ行きのバスが迎えにくるというので、バスを待つ。荷物は宿に預けておくことにした。このバスは路線バスであるにもかかわらず、ゲストハウスを回って客を乗せていくようだ。自分が乗ってからも何人かの客を乗せて、一路パムッカレへとひた走る。このバスはミディバスで、大型バスほどのスピードがでない。何度も大型バスに抜かされていった。このバス会社、パムッカレという名の会社である。いままでいろいろなところで見たことのあるバス会社だった。この日の夜行バスでイスタンブルへ向かうが、これもまたパムッカレ社。

バスはドライブインで休憩し、通常はパムッカレへの玄関口になるデニズリにも立ち寄らずに、パムッカレの村まで直行する。白い山がみえてきた。パムカレである。想像していたよりも、黒く汚れているところが目立つ。雪に覆われた山のように輝きはせずに、鈍い白さである。

13時前にパムッカレ村のバス会社の横に到着。3時間30分かかったわけだ。宿で切符の手配をしてもらったときは、2時間30分、時間かかっても3時間で着くと宿の主人がキッパリ言っていたので信じていたのだが、全然違っていたわけだ。これじゃあ、帰りのバスが遅れたりすれば、21時15分の夜行バスに乗れなくなるかもしれず、不安になる。17時にセルチュクに戻るバスが、ここから出るので戻るようにとの連絡があり下車。4時間でパムッカレ観光をしなければならない。まずは、石灰棚の下の土産物屋兼食堂で、ケバブサンドイッチをほうばって腹ごしらえ。

 一番下の石灰棚から上部を望む

山を少し上がるとチケット売場があり入場券を購入。5MTL(440円)。さらに少し上がると、一番下の石灰棚がある。そこで靴を脱ぎ、はだしになる。石灰棚には水がはいっていたのだが、温泉のようで生温かい。棚はプールのような感じで水がたまり、遠くから見ると青みがかっていたのだが、そばまでやってくると、ただの濁った水であった。この石灰棚とその上に位置する石灰棚の間は、小石が多くて、石灰におおわれているわけではないのだが、それでも靴を履いてはいけないので、靴を持っての移動になる。それにしても、足の裏が痛い。なにしろ小石が多いところをはだしで歩くわけだから。特に、土踏まずのあたりでやや大き目の石を踏んだときはとても痛い。石灰岩の白い部分を選んで歩けば痛くないのだが、場所によっては石灰岩が全然覆ってないような箇所もちらほらあるのだ。

 上の石灰棚から下を望む

石灰棚の中で観光客が歩くのを許されているのは、ロープで区切られた遊歩道沿いだけである。石灰棚の上の方へいくと、すでに石灰棚に水がはいっておらず、汚くなっているところもあった。それでも、遊歩道の終点近くで、水が青くたまっている石灰棚が数個かたまっているところがある。その石灰棚が一番美しかった。遊歩道は500mほどで、石灰岩でできた山の中腹から台地上になった山の上部まで続いていた。この間ずっとはだし。自分がそろりそろり歩いている中を、すいすいと通り抜けていく人も多い。よくぞ、そんなに早く歩いて、足の裏が痛くないのだろうか。

 遊歩道の外の石灰棚

石灰棚の上部の入口から遊歩道の外に抜け、靴をはく。しばらく歩いたところに、温泉プールの施設があり、その背後にヒエラポリス遺跡が広がっている。紀元前2世紀から数世紀間、繁栄した都市である。まずは、浴場跡を利用しているヒエラポリス博物館にはいって、出土品を見る。続いて、遺跡を見て回る。保存状態が一番良いのが劇場。炎天下を歩いて、動く気力が失われつつあったため、劇場の上部に上るのは断念。ほかに教会跡や神殿跡などを見る。これらは保存状態がよくなく、建物の土台が残されている程度であった。何の跡かということは、聞いてもないと分かりづらい。

 ヒエロポリス遺跡の劇場

ヒエロポリス遺跡が広がる台地の真中にパムッカレ・テルマルという温泉施設があった。温泉プールになっていて、たくさんの人々がプールにつかっている。プールの中には、遺跡の石材などがあったりしている。プールのまわりにはテーブルがならび食事場所のようになっている。

 パムッカレ・テルマル

帰りのバスの発車まで1時間くらいになってきたので、村まで石灰棚の遊歩道を歩いて戻らねばならない。はだしになって、遊歩道を上のほうから下に向かって歩いた。やっぱり、小さな石の多いところなどでは足の裏がとても痛いので、そろりそろりと歩いていった。それでも、バス乗場まで戻るとまだ30分以上待たねばならなかった。

17時に帰りのバスが出発。でも、しばらくの間、バスはパムッカレ村の中を回って、いろいろなゲストハウスの客を拾って回る。バスは満席。行きと同じ時間かっかってセルチュクに戻るとすれば、帰り着くのは20時30分。セルチュクからイスタンブルに向かう夜行バスの発車は21時15分なんで、宿に荷物をとりにいって、オトガルに戻るので精一杯の感じだ。もし、行きよりも時間がかかることがあれば、予約している夜行バスに間に合わなくなるかもしれない。そのため、3時間30分の間ずっと、何事もなくバスがセルチュクについてくれと念じ続けていた。

行きに休憩したドライブインでやはり休憩をとり、なんとか20時30分ころにセルチュクのオトガル着。ホっとした。各ゲストハウスを回って客を降ろしていくサービスはしておらず、オトガルから宿まで10分歩いて戻った。宿についたのが20時40分。ところが受付に誰もいない。家族全員で夕食の世話をしているためだ。それで、屋上のまで行って宿の主人に帰着を報告。シャワーを使ってよいと勧められたので、シャワーを浴びる。服を着終わると21時。なんとか歩いてバスに間に合う時間であったが、宿の車で送ろうということになって、オトガルまで車で運んでもらった。バス発車の10分前にオトガルに着いたのだが、バスは10分遅れてやってきたので、しばらく待った。この間に、ゆでとうもろこしを買って食べたが、それ以外には食べ物を売っていなかったので、バスの中で菓子類を食べることにした。自分の持参した菓子のほか、バスのサービスで配られた菓子を食べて空腹をしのいだ。